転生悪女の幸せ家族計画~黒魔術チートで周囲の人達を幸せにします~【書籍化+コミカライズ準備中】
59 すごく驚いたこと【ノア視点】
ある日、ノアはクリスの書斎に呼び出された。
「失礼します」
声をかけてから扉を開くとそこには、父の他に大好きなアルデラの姿もあった。
「姉様も父様に呼ばれたのですか?」
アルデラは少し困ったような笑みを浮かべる。不思議に思っていると父は膝をついてノアの目線に合わせた。こちらを真っすぐに見つめる父はとても真剣な顔をしている。
「ノア、大切な話があるんだ」
その言葉にとても嫌な予感がした。
「もしかして……姉様のことですか?」
静かに頷いた父を見てノアは泣きたくなった。ずっと恐れていたことが起きてしまった。
初めてアルデラがこの家にくると聞かされた日、父はアルデラのことを『母様じゃない』と言っていた。母様じゃないアルデラは、この家が嫌になったらノアを置いていつでも出て行ける。
「大切なお話って、もしかして……アルデラさんが、ぼくの姉様じゃなくなるってことですか?」
父とアルデラは顔を見合わせた。
「ノア……」
父の言葉を遮り「そんなの嫌です!」と叫んだ。
今までずっと良い子だった。わがままなんて一度も言ったことがない。でも、今回だけは無理だった。どうしても我慢できない。
「ぼくは嫌です! ぜったいに嫌だよぉ!」
小さな子どものように泣き叫んだ。
「父様のせいだ! 父様が、父様が……」
アルデラを母様にしなかったから。アルデラが母様だったらずっと一緒にいられたのに。
父が悲しそうな顔をしているのが見えた。それでも泣きやむ気はない。大好きな人がいなくなってしまうのに、もう聞き分けの良い子でなんていられない。
「ノア」
優しく名前を呼ばれたかと思うと、アルデラに抱きしめられた。
「ノア、ごめんね」
『姉様、行かないで』と言いたいのに、泣きじゃくってしまいうまく言葉が出てこない。
「大丈夫。私はずっと貴方の姉様でいるわ」
「……ほ、ほんと?」
「うん、本当よ」
アルデラが微笑みかけてくれたので、少しずつ落ち着いてきた。手の甲で涙をぬぐうと、アルデラが頭をなでてくれる。
立ち上がったアルデラは父に「そういうわけだから、私達が本当の夫婦になる話はなかったことにしましょう」と言った。
目に見えて落ち込んだ父は「……そう、だね」と小さな声で呟く。
「そうよ。ノアがこんなに嫌がっているんだもの。今まで通りがいいわ」
二人の会話がよくわからなくてノアが「本当の夫婦?」と言葉を繰り返すと、アルデラは「もういいのよ」と吹っ切れたように笑った。その後ろで父がフラつきながら書斎机の椅子に座る。
ノアはアルデラの袖を引っ張った。
「姉様、ずっとここにいてくださいね?」
「もちろん」
「やったー! じゃあ、ぼくが大きくなったら、ぼくのお嫁さんになってください」
ゴンッと大きな音がしたので驚いて見ると、父が書斎机に突っ伏して頭を打っていた。
「父様?」
ゆっくりと顔を上げた父は「ノアとアルじゃ、年の差が合わないよ」と言った。
「そんなことありません! 父様と姉様は十歳年が離れています。ぼくと姉様も十歳差なので少しも問題ありません」
ノアが胸をはってそう言うと、父はもう一度書斎机に突っ伏した。
アルデラはクスクスと笑っている。
「ノア、ごめんね。私はノアとは結婚できないの」
「どうしてですか!?」
「私、別の人のことが好きだから」
驚きすぎて「ええ!?」と大声で叫んでしまった。
「それは誰ですか!? ブラッド? セナ? あ、コーギルさん!?」
アルデラは「違うわ」と言いながら首を振る。この家の人ではないということは、やっぱりいつかアルデラはこの家から出て行ってしまう。悲しくてまた涙があふれた。
「……父様のせいだ。父様が姉様のこと『母様じゃない』なんて言うから! 姉様がぼくの母様だったら良かったのに……」
アルデラは不思議そうに首をかしげた。
「えっと、ノアは私が母様になったら嬉しいの?」
ノアが一生懸命頷くと、なぜかアルデラは微笑んだ。
「じゃあ、これからは私がノアの母様になってもいい?」
「……?」
「私ね、クリスのことが好きなの。それに、ノアのことが大好きだから、ずっとあなたの成長を側で見ていたいの。ダメかな?」
夢のような提案にノアは自分の頬をつねった。とても痛い。
「夢じゃない? 本当に姉様がぼくの母様になってくれるんですか!?」
「うん、ノアが良ければだけど……」
「良いに決まっています! ぼく、嬉しいです! あの、えっと……」
少しだけ躊躇ったあとに「か、母様!」と言ってアルデラに飛びついた。アルデラはしっかりと抱き留めてくれる。
「父様! さっきは父様のせいとか、父様が悪いとか言ってごめんなさい! ぼく、父様のこと、大好きですから!」
父は「わかっているよ」と笑って許してくれた。
「ぼく、母様と一緒にやってみたいことがたくさんあるんです! あの、寝る前に絵本を読んでもらっていいですか? 一緒にピクニックにも行きたいし、あの、えっと、他にもたくさんあって」
アルデラは「いいわよ! 全部しましょう!」と言ってぎゅっと抱きしめてくれた。
父が「それ、私も参加していいかな?」と寂しそうに呟いたので、仕方がないので仲間に入れてあげることにした。
「失礼します」
声をかけてから扉を開くとそこには、父の他に大好きなアルデラの姿もあった。
「姉様も父様に呼ばれたのですか?」
アルデラは少し困ったような笑みを浮かべる。不思議に思っていると父は膝をついてノアの目線に合わせた。こちらを真っすぐに見つめる父はとても真剣な顔をしている。
「ノア、大切な話があるんだ」
その言葉にとても嫌な予感がした。
「もしかして……姉様のことですか?」
静かに頷いた父を見てノアは泣きたくなった。ずっと恐れていたことが起きてしまった。
初めてアルデラがこの家にくると聞かされた日、父はアルデラのことを『母様じゃない』と言っていた。母様じゃないアルデラは、この家が嫌になったらノアを置いていつでも出て行ける。
「大切なお話って、もしかして……アルデラさんが、ぼくの姉様じゃなくなるってことですか?」
父とアルデラは顔を見合わせた。
「ノア……」
父の言葉を遮り「そんなの嫌です!」と叫んだ。
今までずっと良い子だった。わがままなんて一度も言ったことがない。でも、今回だけは無理だった。どうしても我慢できない。
「ぼくは嫌です! ぜったいに嫌だよぉ!」
小さな子どものように泣き叫んだ。
「父様のせいだ! 父様が、父様が……」
アルデラを母様にしなかったから。アルデラが母様だったらずっと一緒にいられたのに。
父が悲しそうな顔をしているのが見えた。それでも泣きやむ気はない。大好きな人がいなくなってしまうのに、もう聞き分けの良い子でなんていられない。
「ノア」
優しく名前を呼ばれたかと思うと、アルデラに抱きしめられた。
「ノア、ごめんね」
『姉様、行かないで』と言いたいのに、泣きじゃくってしまいうまく言葉が出てこない。
「大丈夫。私はずっと貴方の姉様でいるわ」
「……ほ、ほんと?」
「うん、本当よ」
アルデラが微笑みかけてくれたので、少しずつ落ち着いてきた。手の甲で涙をぬぐうと、アルデラが頭をなでてくれる。
立ち上がったアルデラは父に「そういうわけだから、私達が本当の夫婦になる話はなかったことにしましょう」と言った。
目に見えて落ち込んだ父は「……そう、だね」と小さな声で呟く。
「そうよ。ノアがこんなに嫌がっているんだもの。今まで通りがいいわ」
二人の会話がよくわからなくてノアが「本当の夫婦?」と言葉を繰り返すと、アルデラは「もういいのよ」と吹っ切れたように笑った。その後ろで父がフラつきながら書斎机の椅子に座る。
ノアはアルデラの袖を引っ張った。
「姉様、ずっとここにいてくださいね?」
「もちろん」
「やったー! じゃあ、ぼくが大きくなったら、ぼくのお嫁さんになってください」
ゴンッと大きな音がしたので驚いて見ると、父が書斎机に突っ伏して頭を打っていた。
「父様?」
ゆっくりと顔を上げた父は「ノアとアルじゃ、年の差が合わないよ」と言った。
「そんなことありません! 父様と姉様は十歳年が離れています。ぼくと姉様も十歳差なので少しも問題ありません」
ノアが胸をはってそう言うと、父はもう一度書斎机に突っ伏した。
アルデラはクスクスと笑っている。
「ノア、ごめんね。私はノアとは結婚できないの」
「どうしてですか!?」
「私、別の人のことが好きだから」
驚きすぎて「ええ!?」と大声で叫んでしまった。
「それは誰ですか!? ブラッド? セナ? あ、コーギルさん!?」
アルデラは「違うわ」と言いながら首を振る。この家の人ではないということは、やっぱりいつかアルデラはこの家から出て行ってしまう。悲しくてまた涙があふれた。
「……父様のせいだ。父様が姉様のこと『母様じゃない』なんて言うから! 姉様がぼくの母様だったら良かったのに……」
アルデラは不思議そうに首をかしげた。
「えっと、ノアは私が母様になったら嬉しいの?」
ノアが一生懸命頷くと、なぜかアルデラは微笑んだ。
「じゃあ、これからは私がノアの母様になってもいい?」
「……?」
「私ね、クリスのことが好きなの。それに、ノアのことが大好きだから、ずっとあなたの成長を側で見ていたいの。ダメかな?」
夢のような提案にノアは自分の頬をつねった。とても痛い。
「夢じゃない? 本当に姉様がぼくの母様になってくれるんですか!?」
「うん、ノアが良ければだけど……」
「良いに決まっています! ぼく、嬉しいです! あの、えっと……」
少しだけ躊躇ったあとに「か、母様!」と言ってアルデラに飛びついた。アルデラはしっかりと抱き留めてくれる。
「父様! さっきは父様のせいとか、父様が悪いとか言ってごめんなさい! ぼく、父様のこと、大好きですから!」
父は「わかっているよ」と笑って許してくれた。
「ぼく、母様と一緒にやってみたいことがたくさんあるんです! あの、寝る前に絵本を読んでもらっていいですか? 一緒にピクニックにも行きたいし、あの、えっと、他にもたくさんあって」
アルデラは「いいわよ! 全部しましょう!」と言ってぎゅっと抱きしめてくれた。
父が「それ、私も参加していいかな?」と寂しそうに呟いたので、仕方がないので仲間に入れてあげることにした。