とある蛇の話
旅の始まりの初期
「んで、また500年くらい経ったってわけじゃな?」
近所の野良リス「マリス」に尋ねられ「何回も言ってるじゃん」とふてくしてパンをかじる。
「すまないねぇ………というか、もうワシも年寄りなんでなー。何回も同じ話が聞きたい年頃なんじゃよ」
「悲しくなるから……やめてよ爺さん……」
「手厳しいのぉ………」
親を失ってから、500年という月日が流れた。
僕が天界から落ちた場所、「薄闇の森」は「神々の泉」が眠る立ち入り禁止区域。
ここもまた上級天使にしか足を踏み入れることを禁止されていて、天界の住民や地獄の住人、及びに人間界に住む人間までもが踏み入れることを許されない森なのだ。
それが運が良かったのか、僕は天界の住人(?)であった僕が入ることが出来たのは不幸中の幸いだと言い切りたいのだがーー。
「あいててて……すまぬ。有馬……あのタンスにある花瓶の水をいれかえてくれぬかのー?」
こんなヨボヨボなおじいちゃんリスと、一緒に暮らすことになるなんて……ちょっと考えられなかった。
だって、食事中には食べ方が汚くてしょっちゅうこぼすから、掃除するのも僕だしーーー。
「あと、おばあさんを呼んできてくれぬかのー?」
「おばあさんは、一年前に亡くなったでしょ?爺さん……」
こんなふうに人の事を忘れたり、いるはずのない人を呼ぶようになってだいぶボケてるから一人で生きていけるのか……心配なんだよね……。
前は軽い方だったんだけど……年を取るとそんだけ弱ってはくるものなんだな……。
話は両親が、亡くなった直後に遡る。
あの日僕が「薄闇の森」に落ちて、最初に助けてくれたのは実は、マリス爺さんではないんだ……。