とある蛇の話
「何かを愛する事って、それなりの犠牲っていうのがともなうの。その愛を手に入れるためには、理不尽な条件を受け入れなければならない時がどうしてもあるのよ。幼い有馬には、わからないかな………。大人になるまで……」
僕は「愛する事に、条件なんてないでしょ!!」と言いたかったけど、飲み込んだ。
お母さんの背中が映る、鏡を覗き込む。
そこに写っていたのは、澄んだ瞳をした金色の短髪をした男の子がお母さんに抱かれて苦悶な表情をしてる。
蒼い瞳は僕の全てを貫きとうすような、透明力で咄嗟に目を逸らす。
僕は自身の姿形が、どうも好きになれない。
お父さんのように、剣もまともに振れないへっぽこな体型だし、お母さんのように立派な鱗を持っていない「子供」だったからだ。
大人は子供が、どんなに必死に意見を裂こうとしても「子供だから」で済ませようとするのは、物心ついた頃には理解できていた。
まぁ、人間で言う「百年」ぐらいたったぐらいからやっと理解したという解釈もできてしまうかもだけど……。
「それに、天界を降りてしまったらお父さんと出会って百年くらいの月日が出会った時から天界の特性で老いが止まっていたのに、それがなくなるのよ?一気に背骨が曲がって、絶命しちゃうわよ?それは有馬にとっても、嫌でしょ?」
「それは……そうだけど………」
「本当は、お父さんのマスクを外している顔が見たい」という願望も………幼い僕にとっては口を出すことが出来なかった。