とある蛇の話

体一面を、吹き飛ばすほどの強風が吹く。




それは冷たく、恐ろしいほどに痛々しい風だった。




今森の中は、お昼の十二時だと言うのに満月がお空に浮かび星がまたたいている。




どうしてこんなにも、またたいているのか。




それは、太陽というのは元々天界が作り出した光のエネルギーだ。




天界に住んでいる天界住人の心と、人間界の人間に希望を与えるために作られた、惑星でもある。





天界と人間界だけの、特別な星でこの禁忌の森にはそのエネルギーを使うことが許されていない。





だから本当は月の隣に太陽はあるのだけど、天使が魔力を抑えて姿が見えないように加工されているのだ。





禁忌の森に写っている、この月は人間界と下界に許可が出ている闇のエネルギーを放つ惑星。





暗く人を絶望に導く、この月は十分間浴びるだけでも鬱にさせるほどのエネルギーを持つ危うい代物だ。




もちろん人間界では、このエネルギーは緩和されて闇を防いでいるがーーー夜中に危うい人間がチラホラと現れるのは、その影響もあるのだろう。





例えば、人を危うくさせる心を作り出すだけじゃなくてーーー。




「逃げても、無駄ですわよ?」



振り返った先にいたのは、あの上級天使だった。





「どうして………?!」





鍵の守護の光を使って、逃げ出したはずなのにどうしてこの上級天使がいるのか、僕には理解できなかった。




「馬鹿ですの?私はこの天界の1位2位を争う、天界の天使ですのよ?ありとあらゆる魔法を、習得するのは容易い事………魔法の性質を解いたのですのよ」





「残念だったな。蛇野郎。逃げられると思ったか?お前の魔法のことも全部このマロル様にお見通しだったんだよ。たとえ、暗号の魔法をかけていたとしてもな」







ーー暗号の魔法も解かれてたっていの……!?






「一体どうしてこんな事が出来るのかしら?という顔をなさってますわね?」





図星をつかれて、僕は押し黙った。





「それは、あの魔法陣をかけた瞬間に読み解いたのですのよ?私はあの瞬間魔法を使って貴方の体質を読んだのです」





「僕の体質を読んだ……」





ふと背筋が凍って、首筋を触ってみた。



するとビリッと、弾けるような熱さを感じたから手を離すと手には見たこともないトカゲが現れた。


「そいつをお前の体に忍ばせて、色々と情報をもらったんだ。俺とマロル様と協力してやったんだよ。馬鹿だよな。お前。盗聴されているようなもんで、家でも色々秘密をペラペラ十字架の前で話すんだから。色々秘密知ってんだぞ?俺たち」



十字架の前というのは、きっと僕がお爺さんのお墓参りに出向いていた時のことを言っているんだ。
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