とある蛇の話
こんな理不尽すぎるルールなんて、天使が壊すべき忌まわしき風習であることには違いない。
それを仕事放棄して、僕を出しにして正当化しようとしている目の前にいる化け物は本当に天使なのか疑いかねる。
だけどもその天使は、本来の目的はそうでないようでーーー。
「さあさあ。話を結論から申しますと……鍵をこちらによこしてくださらない?その鍵は元々天界のもの。下民の貴方が持ち合わせていいものでもないんですのよ?」
笑顔で上級天使、マロルはそう口にした。
「この状況で………渡せるわけないよ………」
「困りましたわね………それは世界を覆させるような恐ろしい呪文や魔法が、込められていますのに………」
「口答えする権利なんて、ないんだがな………。お前ら一族は、罪を被ってその鍵を奪ったくせに、どうして被害者面して、渡さないんだ?」
「………それは………罪を……自分たちの力で償いたいからだよ………」
「その罪を償うどころか、人間に恋をして忌まわしき存在の貴方が生まれて、贖罪を生み出したと言うのに?」
ぐうの音も出ない。
「やはり蛇には、この鍵は早いのですよ。罪の重さとやらは貴方ががたにはわかっておりませんゆえまた、間違いを起こすに違いありません。さっさとお渡し差し支えないかしら?」
手をかざされたと思いきや、手に透明な銃口を向けられた。
ーーーこの人は本気だ。逆らったら命なんて消す事しか考えてない………。
確かに言っていることは、気が狂うほどの正論できっとそのほうが世界は、誠実に回っていくんだろう。
だけれども、本当にこの天使達に鍵を渡していいのか?
だって、やっているこはカツアゲに違いないし、いじめを「相手に非があればどんな、拷問をかけてもいい」という理由で正当化する悪行極まりない天使達だ。
どんな理由があれ、こんな辛い思いをさせて連行させるという考えを持った生きとし生けるものは、離れたほうが身のため。
「どこ行きますの!!もう一度撃ちますわよ!!」
気づいた時には、走り出していた僕。
左肩を見ると、一筋の血が細い線を僕の走る北方向に線を描いていた。
おじいさんが大切にしていた、木こりの木が一本倒れて、土もろともえぐって倒れ込む。
マロルが拳銃を撃った、因果応報として木が倒れたのは容易かった。
それほどまでに大きな木を、貫き通す力があることに僕は鳥肌が立った。
ーーーだけど、足を止めるわけにはいかない。
確かに罪を重ねるのは、この蹂躙した世界にとっては、禁断の行為なのかもしれない。