とある蛇の話
だけれども、それは周りの影響だって少なからずは加点している場合だってある。
周りが悪ければ、事故を犯した本人は悪の色に染まってしまう事だってある。
その周りから、逃げ出すってのも大切な事だってあるんだからーーー僕はーー逃げるを選択するんだ。
逃げているようにも見えるかもしれないけど、この子供達に鍵を渡すわけには行かない。
草地を走って、足を擦りむいて草地に倒れてしまいそうになるのを片足で全身を支え、大地を蹴る。
そんな動作を百回以上繰り返して、心臓が爆発する寸前みたいに、鼓動が鼓膜を貫きそうな音がしそうなとき。
それは一歩前へ進んで、また地を蹴って逃げる矢先だった。
その瞬間とやらに、足が土粘土を踏んだかのように重心が埋もれたのだ。
次に感触が来たのは、冷たい肌を刺すような痛み。
「うわぁっ!!」
そう情けない声を出した瞬間に、僕は池に落ちたのだ。
全身に冷水に浸かった、僕の身体を気泡が蜂の大群のように囲んで僕を一瞬で包んでは消えた。
目の前に見えたのは、オレンジ色の光をお腹に宿した透明な金魚。
ーーーここって………「神々の泉」なの?
言及するまもなく、僕は金魚に囲まれて傷ついた腕に噛みつかれた。
あまりの痛さに、僕は叫んで空気を口からこぼれ落ちした。
その時に口で確保していた、酸素もろともなくなってしまったものだから意識が朦朧とし始めもがく。
僕は水の中にいると、泳げない。
綺麗なエメラル色の水に包まれ、美しい三日月や優雅に揺れる水草に囲まれて死ぬ人生だったとは……。
ふと傷跡を見る。
噛まれたところの傷跡は、跡形もなく消えていた。
やはり神々の泉というだけあって、身体の組織を直してくれる魔力のようなものは働いているらしい。
ーーもうだめだ………息が出来ない……。
ゆっくりと生命の停止が近づく中、ゆらゆらとひとりでに鍵が揺れた。
最初は水面に揺れて、鍵が揺さぶれているだけだろうと感じていた。
だけども、その時は違ったみたいでーーー。
鍵が沈みゆく僕とは逆方向に、上へ上がっていくのを見た。
沈んでゆく僕を引っ張るぐらいに、それは強い力だった。
ーーー………?どうして……?
頭の中に沢山の疑問が、消えては浮かんだけれど生き悶える瞬間だったから、あまり詳しくは覚えていない。
だけども、もうすぐ死ぬだろうと思って完全に目を閉じきる瞬間だった。
閃光が目の前を包んで、その光の中心から真っ青な青色の大きな芽が伸び始めたのだ。
その芽は、僕の身体を隅々から包んで、視界を真っ暗にまた染め上げた。