とある蛇の話
それは、単純に「子供だから」という理由で話を避けられる可能性もある。
だけどそれ以前に、「お父さんがそもそも顔を見せたくなかった」という理由だったらと考えたら言葉が喉を支えてしまう。
ーーやっぱり天界に、住む理由っていうのは詳しくは教えてくれないのかな……?二人とも。
僕はちょっぴり悲しい気持ちにもなり、寂しさを覚えた。
大きな欠けた月が、神様が嘲笑っているような口に見えてシーツをぎゅっとつかむ。
そんな僕を見かねたのか、お母さんはパンッと手をたたいて「そうだ!!有馬にプレゼントがあるのよ!!今日で人間で言うところのちょうど3歳ぐらいになった記念って事で!!」とはしゃいでベッドを降りた。
手渡されたのは、金色の三日月の形をした鍵だった。
先端にはチェーンが付いていて、首にぶら下げることが出来る。
「これを貴方にあげるわ」
「これ………何なの?」
「禁忌図書館の鍵で、「愛の本」の解除鍵なの」
禁忌図書館という言葉を聞いた瞬間、僕の身体の隅々から水分が毛穴から溢れ出すのではないかというくらいゾワゾワした。
「禁忌図書館」
それはこの世の森羅万象の事柄について、正確に詳しく執筆された多種多様な本を収める「神専用の図書館」とも言い換えられる場所ーー。
天使でも絶対に足を踏み入れることが出来ない場所なのになぜ、お母さんがこんな物を持っているのか。
「先祖代々私達、蛇族は神に抗って「エデンの林檎」だけではなく「禁忌図書館の鍵」をも手に入れ人間達に貢献しようと戦ったらしいの」