とある蛇の話

「あれ?こんなところに蛇がいるよ?お兄ちゃん!!」


しまったと思った時にはもう遅い。




ちゃっかり男の人のゴツゴツした手の感触が、背中に伝う。




僕は糸も簡単に、つままれたのだ。





「なんだ?この蛇?」




「お………お兄ちゃん!!簡単に掴んじゃだめだよ!!噛まれて毒にやられたら、どうするの!!」




「でもこいつ、疲れて首元が折れてるぐらいにに精力ないぞ?大丈夫だろ。噛みつこうなんてしてこないはずだ」





ーーいや、正確にはうなじを掴まれて、首が上手いように動かないから攻撃上にも、できないんだけどな………痛っ!!



なんだと思ったら、鱗を一枚そのお兄さんとやらに抜かれた。



ビリビリと、焼いた針を直接皮膚にさされたような激痛が襲う。




「こいつ……ちゃんとした蛇なのか?取れかけた蛇の鱗取ってやったら、ハート形になってるぞ?ホワイトチョコみてぇー」




「お兄ちゃん。流石に蛇が可愛そうだから、離してあげてよ」




強い怒りを覚えながらも、透明な箱ケースに落とされた僕は、お兄さんとやらを睨んだ。




最初は、最低な人だから噛み付いて絶命させてやろうなんて僕は物騒なことを考えた。




だけれども、そうはいかずに運命という文字は周りだす。




人懐っこい金髪の無造作な髪色で、何処か頼れぬ姉御肌の顔つきをしてる美しい面を僕の瞳は捉えた。



その瞳はまるで僕の全てを見透かしているような、純粋な目で僕は身体の隅々まで骨抜きにされたようなものだ。




「んで、どうするの?」





僕の初恋心なんて1ミリも知らない、お兄さんは僕をじってみて呟いた。




っていうか、上から覗く彼の顔が月が柔らかく彼の体を優しく包んでる。





包んでいると言っているが、ちゃんと制服を着ている男子高校生らしいけど。





「このまま庭で死んでしまっても………白い蛇だから縁起が悪い事が起こりそうだから………とにかく飼ったりとか………」





「お前、あんだけ嫌がってたのにいいのか?」






「やっぱり野垂れ死にを同じ生き物として、目に入れておくのは少ないほうがいいっていうか………」




「気弱だな、お前は。昆虫博士になるだけなら動物の蛇なんてほっておけばいいのに。生きとし生けるものいつか死ぬからそんな執着するなよ」




呆れた様子で、お兄さんは僕の体を触った。




「こいつが死んだら、俺が面倒見るしお前はやりたい事をやれよ。この世界は好きな事を貫き通せたやつが正義だからな」




僕を批判しておいて、体を撫でる力加減は柔らかい。




お兄さんは弟のことを、心の底から凄く愛しているんだろう。
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