とある蛇の話
ーーーやっぱりそんな悲惨な過去が……。
「んで、お母さんと弟を見守る為にバイトしたり、面倒見る為に料理作ったりしてるけど、ふと思ったりするわけよ………俺ってこのままでいいのかなーなんてさ」
何処か理央くんは、目に暗闇を宿したままちょっとだけ俯いた。
やりたい事が思い切り出来ないというのは、やはり辛い。
それでも生きていくためには、そんな夢など内破いてやらなければならないことを優先的に取り組まないといけない。
それが理央くんを苦しめているのなら……僕は力になってあげたいとは思う。
ーーでもどうやって?
そんな疑問は空中に溶けて消えた。
暫く僕は理央くんに撫でられ、ときめきという余韻に浸ってたらいつの間にか眠ってた。
好きな人と夜を共にするって、こんなに歯痒いものなんだな……。
真っ白な月が、僕をじっと覗いているように見える。
ーーーそろそろ帰りたいな………。
でも、後ろを振り返る。
スヤスヤと寝る夢理央くんの顔が、この世のものとは思えないほどスラリと光って輝いてる。
ーーーでも……かえりたくない………っ!!
2つの葛藤に駆られて、ベッドの上をゴロゴロともがき苦しんでいたらーー。
「君、何をしてるんだい。迎えに来たと思ったら、もがき苦しんでいるじゃないか」
凛と涼し気な声音が聞こえた。
振り向くと、真っ白な純白な毛皮を包んだような猫が立ってた。
「やぁ、こんにちは。元気にしていたかい?不遇だね」
ーー猫……なんでこの世界の猫が喋ってるの……?
左目は黄色、右目は青色という天界でも中々お目にかかれない猫がどうして言葉を操れるのか……。
「あの…動物の地縛霊さんですか?」
猫は少しムッと下様子で、尻尾をかすかに揺らした。
「この状況で動物の地縛霊が現れたとして、僕のメリットは一つもないよね?……面倒くさいことはしたくないのに……なんでこんな迎えに来なきゃいけないのか………。君のせいだからね。後でちゃんと罰金をしてくれよ?」
ーー面倒くさいことはしたくない……?
「あっ!!まさかあなた……神様!?」
「やっと気付いたの?おっそーい。」
パーンと紙切れがどこかで舞った音がした。
「でも……どうしてここに?」
「理由は簡単さ。上級天使からの通報だよ」
きっとあの、天使マロルって子が通報したんだろう。
これから、とんでもない罰を受けそうだな………。
「やっぱり、僕って許されませんかね?」
僕は伸びをしながら、手持ちのスマホをピコピコと扱う猫に話しかける。
「罰って君、何か悪いことしたのかい?」