とある蛇の話
「神様が大切にしてた、禁忌図書館の鍵ーーー返してほしいんじゃないの?それだから、罰を設けたんでしょ?」
「確かに罰は設けたけど………僕は罰を与えたとは思っていない。というか、蛇の自業自得で息苦しい思いをしているって考えてるからーー君はその先祖が犯した罪の巻き沿いがあるからこんな状況になっているんじゃないの?違うの?」
呑気にスマホの画面をポチポチと操る、純白な猫は何処となく「本当に神様なのか?」と疑問に思う節があった。
だけども言っている内容は、神様だから全てお見通しで、何も反論する余地もなかった。
「禁忌図書館の鍵ーー返すよ……。ご先祖様が失礼なことをして、ごめんなさい………」
「君、今更返されたとて人間界が、平和になると思ってるの?もう手遅れだよ。その少年をみても何も感じないのかい?」
確かにあの事件の一連がなければ人間界に、苦しみや悲しみ、悲劇、格差なんて巻き起こることはなかったとは思う。
だけども、この鍵はベビ族が持ち続けていたとしてもどうすることもできないような威力というものを持っている気がするんだ。
神々の泉に落ちて、変な力が発動して人間界に転生しちゃったあの日から、僕はそう思う。
「だけど……償いとして僕は神様に返さないといけないと思うんだ……。蛇たる僕がまた罪を犯して、周りの皆を巻き込まないようにするためにも……」
「君、全然僕が蛇族に鍵を携えた意味がわかってないね」
「へ?」
「いいかい、この世の中の生き物は全て、何かしら迷惑をかけている部分というのは絶対にあるんだ。その迷惑をかけた分自分にできることをやってその迷惑を葬って、初めて「世の中の役に立つ」っていうんだよ?蛇族ってのはそこがわかってないから、それに気付くように僕は鍵の件は見なかったことにしてるの。いい加減分かってよ。罪を償うってのはそういうことなんじゃないの?君のやっていることは、他人への押し付けに近いよね?」
喉から出かけた言葉が、泡のように消えた。
何もおかしいことは、言っていない。
息が詰まるほどの、愚問だった。
「僕自身で、鍵の件は昇華しないといけないって……事?」
「それ以外、罪を犯した一族で役に立つ方法はないでしょ?」
スマホから、鈴の音のような音がしたと思いきや無機質な白い線が空中を走る。
四角の立方体を描いたと思ったら、純白の扉が開いたのだ。
「それじゃあ、帰るよ」
「………え?でも、もう天界には帰れない気がする……」
「なんで?」
「僕の正体がバレて、学校も1日経ってしまったと思うから」