とある蛇の話

地獄への生活から、進路へ


あの日から、どのくらいの月日が経っただろうか。




500年ぐらい四季が巡るしく代わり、やっと高校2年生ぐらいの年になった。




あの日から、僕は地獄の住人になることになったのだけどーーー居心地は前より全然いい。




初めはいじめられて、地獄の世界にもある学校に馴染めないのではないかと沸々と諦めという感情が湧き上がっていた。




だけども違った。




当時は小学校三年生ぐらいだった。




大人の上級天使の指導もあって、転校した初日だ。



クラスの皆に蛇だと分かるような、魔法を直接大人上級天使にかけられて、顔も姿形も1メートルはあろうかという蛇の姿にさせられた。




そんな状態で、学校のクラスメイトの挨拶に出たというのに、大歓迎してくれたのだ。





月日があっという間に経っても、全然いじられるどころか沢山の野外授業をやった。




呪術の勉強が主だったけど、地獄の気候や動物を学ぶ機会が多くて、人の苦しみ悲しみっていう感情が研ぎ澄まされた気がする。





クラスメイト達も、一つ目小僧、河童、メデューサ、鬼、天狗ーーなんていう妖怪や、忌み嫌われている化け物って呼ばれてる子達が多かった。




人の数倍傷ついている、人種だから人をいじめようとする意地悪な思考はあんまり受け付けないみたいで、皆優しい。




そんな優しい安心して、勉強できる空間があるにもかかわらず僕は、学生寮の個別の部屋でよくため息をついた。


手鏡に貼られた、小さなシールを眺めては伏せての繰り返し。




そのシールには、人間界で出会った理央くんという少年が貼られている。




屈託のない笑顔がとても印象的で、あの日から胸打たれて頭から離れることが一切ない。




美少年故に、惹かれる僕はきっと、地獄の人間に嫌われてしまうんだろうなんて考えるくらい悩ましい。




胸が張り裂けて、身体中の血液が部屋いっぱいに飛び散るのではないかと思うくらい、鼓動高鳴る。





僕は改めて、月夜を見上げる。




ーー神様は……僕を今でも観ているんだろうか……?



もし観ていたら、助けてほしいというのが心の底の本心だった。



でも……神様は言った。




「もう僕は助けない」……と。




「こんな苦しい思いをするくらいなら、死んでしまったほうがマシだったよ……。親と共に眠るように、消えてゆきたかった」




これもきっと、蛇一族の罪の重さってやつなのだろうか。




もしそうだとしたら、先祖代々の蛇のご先祖様に会いに行って、「禁忌図書館の鍵を奪わないで!!」と説得し、地獄に棲むことを提唱したい。


そのほうがよっぽど、平和で今頃こんな悲惨な思いを僕はすることはなかったんだろうから。

< 36 / 60 >

この作品をシェア

pagetop