とある蛇の話
「「奪わなければ始まらない恋」ってのは、誰かの幸せを願って、その人の事を助けたいって力になる原動力のことをいうの。貴方は、理央って人を奪いたいとか、周りが傷ついてもいいから結ばれたいって思ってる?」
「………それは、違う」
「なら、「奪わなければ始まらない恋」なのよ!!何も悪いことしてるわけじゃないじゃない!!周りが抑制して、変な責任を取りたくないから禁忌として封印しているだけよ!!」
手にしていた本が、空高く舞い上がって破裂した。
破裂した本は、キラキラと金色の粉砕と化し中心に黄金の光を放つ宝石が現れた。
その宝石の形は、皮肉にも願いを叶えてくれる流れ星の形をしてる。
「叶えなさい……自分の力で。もうあなたは大人になってきてるのよ?ここで前に進まなかったら、一生後悔するわよ?」
「……確かに、そうだけど……僕は良いの?鍵だって守るようお母さんに託されたし、もうあんな悲劇を起こして周りを傷つけたくない……周りを巻き込みたくないし、いくら何でも、身勝手すぎる気がする」
「あたしは、大丈夫よ!!だって、今まで助けてくれたお陰でこうして魔力を取り戻せたし、それに助けたいって思う原動力を逃したらもうこの先大人になると、そんな経験積めなくなってしまうのよ?早く人間界に、もう一回いってらっしゃいよ!!」
僕は優しく背中を押された。
確かに、この機会を逃せばもう二度と理央くんの元へ降りれないだろう。
それに、理央くんの家族だって助けられずに、悲惨な運命を辿ってしまうってのも言わずが如くだ。
「僕………人間界に入って理央くんを助けたい……これは、本心!!」
ローブの女性はにこりと笑い「たたかって、愛を掴み取りなさい。悪い恋はとっちゃだめだけどね」と背中を押した。
「願い事を心の中で強く願いなさい。その星形の宝石に向かって」
僕は手のひらを合わせ、指を折る。
ーーーどうか理央くんの住む人間界に、行かせてください。
ぐるぐると強い黄金の雨のような光が、僕の眼を突き刺してくる。
その光に負けずと、宝石を眼で捉える。
蛇族の眼は、どんな光にも耐えられる魔法の眼球を持っている。
だからこそ、対象物を真剣に目をそらさずに眼を宝石に向ける。
すると宝石に、薄っすらと紫色の唇が現れてーーニヤリと笑った。
僕は一瞬、心のなかに鋭利な冷凍されたナイフを突き刺されたかのごとく、背筋が凍る。
だけども、諦めずに僕は祈った。
やがて、全ての視界が白に染まった時に、僕の体は宙に浮かぶ。
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