とある蛇の話

人間界に、またやってきた!?



「ぷっはぁ!!!って、冷たっ!?」




勢いよく上がったと思ったら、そこは海だった。



だけど、前回とは訳が違う。



身も応えるような、寒さから僕はすかさず、体を擦る。



柔らかな薄いワンピースを纏ったその姿故に、ベンチにいたおじいさんは新聞を横目に、目を剥いてる。




「あんた……どっから、出てきたんや!?」




僕はハッとして、今の状況に気付く。




後ろを振り返り、鏡に映った僕の顔を見る。




金色のフサフサした髪と、真っ青な宝石が埋め込まれたかのような豊潤な瞳は、我ながらうっとりするほどの出来栄え。




「僕って、ちゃんと人間に転生できたんだ……」





これほどまでの全身に鱗を持たない、人間に生まれ変わったのは奇跡に等しいがそんなに運命というのは、容易いものではない。




「おまわりさーんっ!!ここです!!変な人がーーー!!」


こんな女装家みたいな格好をして、海の中に突然現れたらどんなに屈強な人でもトラウマになるだろう。



警察官を呼ばれてしまったのに、気づけなかったのは僕のミスだ。



「ご………ごめんなさいっ!!!」




「あっ!!お前逃げんなやっ!!詳しく署で話をきかせなあかんで!!兄さん、それが俺の仕事や!!」




バキバキの人間界のどこかの方言から、「捕まるのだろう」と判断した僕は、直ぐ様砂浜を駆け出す。



恐ろしいくらいにザラザラして、指の間に沢山の砂が詰まって、気持ちが悪い。



でも、元々蛇だったから全身を込めて走る事には苦ではなく、あっという間に警察官を巻いた。



でも、すっかり住宅街のど真ん中に来てしまい、街で一人浮いてる。



「ママー!!何であの人、男の人なのに、スカート履いてるの?」


「しっ!!見ちゃだめよ!!」




完全に変人扱いされてしまった、僕。



でもこんな夕日も近いし、どこかの街に迷い込んでしまった天界住人など、この世界はおよびではないようで。



「おーい!!どこにいるんや!!はよ出てきてくれー!!話をちゃんと聞くさかい、怖がらんといてーなー!!」



着々と、あの丸いお腹をした警察官の声が近づいてくる。



警察官に、捕まったら、厄介なことが起きそうだから素直に出向けない。




もし蛇という存在で、転生してきたとわかればどんな仕打ちが待っているのか想像しただけで震えが止まらない。



最悪の結果になる前に、何とか逃げ出したい。


だけど、皮肉なことに行き止まりで端には、大人一人が入り込むような小さなドラム缶が横になっている公園が一つ。



「ここに入るしか、道はないよね……」



意を決して、中を覗く。
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