とある蛇の話
「は……っ、!?ごめんなさいっ………もう許してください!!」
目を剥いて僕は驚いた。
そこの中に入っていたのは、弱々しいほど細身なランドセルを背負った、小学生がいた。
真っ黒なランドセルは、傷だらけで全身絆創膏だらけの彼はどこかで見たような気がする。
「えっと……その、急用だからっ、ごめん!!」
「え……大人?って、うわぁっ!!!」
僕は彼を急いで引っ張り出し、外に追いやってドラム缶の中へ。
「おーい、そこのチビスケ!!この辺に変な兄ちゃんおらへんかったか?」
ブルブル氷水に全身を果たされていたかのごとく、僕はドラム缶中でいつ見つかるのか恐怖でおののいていた。
そんな僕と、ふと一瞬目が合う。
僕は懸命に首を、取れてしまう勢いで横に振り続けた。
そしたら何処か、慎重な顔つきになり「こ……ここには誰もこなかったですよ?」とフォローを入れてくれた。
「そうか……チビスケ。それならよかった。きいつけて帰り」
やっと交渉が終わったのか、事態は急速に終わる。
「もう出てきていいよ」
「ありがとう助かっーーー、いたっ!!!」
思い切り頭をぶつけてしまって、地面に倒れる僕。
頭に数十の、星が回る。
「ちょっと!?大丈夫!?」
「あ……うん。大丈夫、大丈夫!!慣れてるから!!」
「警察に追いかけられるのが?」
「えっと……そうみたい」
すごく困惑されたが、助けてくれたのだからいい人なんだろう。
「えっと……僕の名前は有馬。君は?」
「僕は葉山遥だよ。ここの近所に住んでる」
ーー葉山遥って……!!
「あの遥くん!?」
驚きのあまり、声が出た。
白蛇になった僕を、殺さず保護してくれたあの少年だ。
理央くんの部屋に行ったとき、名前が書いてあった写真を見た。
彼は、理央くんの弟なのか。
感慨深い。
「えっと……どこかで会ったことありましたっけ?僕の事知ってるんですか?」
「知ってるも何もーーー」
ーー今この状況を、どうやって説明しよう。
不意に頭にそうよぎる。
でも、嘘をつくわけにもいかない。
どうせ嘘をついたところで、後々バレてしまうのも嫌だし。
「疑わないで聞いてくれる?」
「なんですか?」
「僕……実は、君が助けてくれた白い蛇なんだ」
「……さ……さようなら」
すかさず逃げようとした、遥くんの手を掴む。
小動物のような、怯えた目をした瞬間申し訳ない気持ちになった。
だけども僕は、手を離さない。
ここで手を離してしまったら、遥くんの事情も救えないし、理央くんとも二度と会えないような気がしたからだ。
怖い思いをさせてしまっている気がして、身が引けるのだけど。