とある蛇の話
「信じてもらえないかもしれないけど、聞いて……」
僕は遥くんの瞳を捉えて、向き合った。
「君のお兄さんは葉山理央くんで会ってるね?」
「そうだけど……」
「そして、君のお母さんとお父さんの関係なんだけどーー」
僕は理央くんに、説明された内容を丁寧に説明してことの経緯を話した。
どれも図星を突かれたようで、拍子抜けた顔をしてる遥くん。
ふと弱々しい足が、震えに震え何処か動揺している。
「そ……そんな存在が、僕達家族にどんな用件があるっていうんですか?機に召さないことでも……ありましたか?」
僕はゆっくりと首をふる。
本当はあまり見せたくなかったのだけど、僕は遥くんに背を向けた。
「首のうなじを、みてごらん」
遥くんの手が僕のうなじを、やんわりと温める。
そこには灰色の鱗がびっしりと浮かび上がっているだろう。
普通は僕のちょっとした呪術で、操ることは可能だけど酷く動揺したときや、水を多く被ってしまった場合に、鱗が浮かび上がることがある。
それは、首筋だけではなく体の至る所に。
得に発症しやすいのは首のうなじ部分で、首筋の中心部分にグロテスクな目玉が埋め込まれているのが今見えるはずだ。
「ひぃっ!!?!」
目玉が開眼した。
「その目玉の中には、何が書いてある?」
「理央の幸せメーター……?」
「蛇族ってのは、代々人間界に降りてきたら、一人の人間を自立させられるぐらいに幸せにしてあげなければならないカルマを背負うことになってるんだ」
蛇が幸せにしなければならない人間は、どうやって決まってしまうのかというと、僕のように恋愛をしていない場合は、生まれ変わる前の因果に関係してるみたい。
僕のように、人間に恋をした場合にはその人が対象物として神から試練を与えられる。
「しかも……時間?タイマーみたいなのが、ついてますよ?」
「この時間内に、理央くんを幸せだと思わさなければ自分自身が召されてしまうっていう時限爆弾付きってわけなんだ」
遥くんは困ったように、俯く。
「ぼ……僕、そんなふうに言われても、よくわからないし……本当に貴方が事実を言ってる決定的な証拠がないから……どうしたらいいか……」
「証拠か………そっか……そうだよね」
僕はしゃがみ込んだ四肢を、上げて道路へ歩きだす。
「……ど……何処行くの?」
「ちょっと、別のアプローチをかけて彼を助けるよ。やっぱり小さい子に協力してもらうなんて、邪道な考えだったなーって思って」
「それって……お兄ちゃんを助けなければ、何か起こるって事はないですよね?」
「え……えっとーー、僕が人間界に、降りてきたからそれはどうにも言えないな……。因果は関係するかも……しれない」
「ほんとに?」