とある蛇の話
「確証はない……可能性はあるかも……ごめんなさい……」
天界の住人が、人間界に降りてくるのは、何かしらやはりデメリットというのは、ないとは言い切れない。
お母さんのように、天界に悪影響を与え、お父さん自身の家族を精神的に追い詰めた過去はあるから尚更だ。
それでも、僕は何だか理央くんを観ていられなかったのと、それほどまでに恋焦がれていたからこそ、降りてきた。
身勝手な理由だってことは、十分に分かってる。
でも、周りには迷惑をすでにかけてしまっているからこそ、被害は最小限に抑えたい。
そんな葛藤が僕を苦しめて、この場所から離れようとしているわけで。
そんな状況を、当時の遥くんは性格上、見捨てられないと僕を助けてくれた。
「ぼ……僕の家に来ませんか?」
「……え?」
それは突然の案件だった。
「でも……お兄ちゃんを助けるって目的上って事で」
「でも……巻き込んじゃうかもしれないよ……色んな面倒事に……」
すると少し、肩が震えた遥くん。
やっぱり無理させてたんだ………。
「でも……兄が死んでもらっては、困るんです……恩返しをしたいし……自分のできることで……。だから、変な事が起きないようにする為にも、貴方を監視してそばにおいて起きたい。それじゃまずいですかね……?」
その眼は何処か半分、強い意志を放っているようで、何処か失意に溢れた絶望色をしていた。
「えっと……嬉しいけど、君は大丈夫なの?」
遥くんは乾いた笑みを浮かべて、腕に着けられた絆創膏をいじる。
「僕は……いじめられ慣れてるから、大体のことは耐えられます……たぶんだけど……。さぁ行きましょう」
僕は拒むことは、この状況になったので従うことしか出来なかった。
「……ちなみに、僕、あなたの為に助けようとは思ってません……」
「理央くんの為でしょ……?知ってるよ。昆虫博士になって、恩返しをするつもりでしょ?」
「天界に住んでいる人は……何でもお見通しなんですね」
「君の情報は、理央くんと家の様子を見たから、推測だよ……。あんまり深い意味はないよ。気にしないで」
気まずい沈黙の中、夕焼け通りを歩く2人。
人一人もいない、オレンジ色に染まる住宅街は何処か寂しげだ。
それでもーー。
「ちゃんと、住む家を確保してくれる代わりに……僕のことも助けて……くれますか?」
僕は車道側を歩く、遥くんを見た。
何処か震えており、萎縮しているのが見て取れる。
ーーもしかしたら、学校とかでイジメられているんじゃないのかな?
そっと手を掴もうとする。