とある蛇の話
理央くんの家内で騒動
「すごい!!やっぱり広い!!」
「そう言ってもらえたら、家内も嬉しいです。きっと」
リビングの椅子に座ると、遥くんがお茶を出してくれた。
僕は一気に、飲み干したが思わずむせた。
「ちょ!?そんなに急いで飲んだら、喉が焼けますよ!?冷ましてから飲んでくださいっ!!」
オドオドして、タオルを持ってきた遥くん、。
「けほっ、けほっ。ごめんね、ついつい喉が恐ろしいほど渇いててーー」
出されたタオルを取ろうとした、矢先目に入ったのは涙目になった遥くん。
何処か動揺した様子で、タオルを渡す手が震えていた。
「死ぬかと思った……怖かった……」
確か、この理央くんの家族はまだ幼い頃にお父さんを亡くしたんだと言っていた。
この様子だと、まだお父さんの死を受け止めきれていないのかもしれない。
相当お父さんが死ぬ状況が、どれほど辛かったかを物語るこの状況。
僕は不本意なことをしたと、心の鉄槌を打った。
「ごめんなさい。何でまだ今あった人に、死ぬとか言ってるんでしょうか……ごめんなさい、ごめんなさい……」
「ううん。僕が悪いよ……だってこんな無茶振りを振りかぶった原因を作ってしまったのは僕だもん。君は、それでも僕を庇ってくれているんだから、悪くないよ。君は優しいんだね」
ふと遥くんの顔が、軽くなった。
僕は適切な言葉をかけてあげられたのだろうか……。
「お前……っ!!誰だっ!!」
どこからか、そんな張り上げた声が聞こえた。
その声は惑うことなく、男性の声で僕の心を鷲掴む。
それは、緊迫して縮こまるような不吉な苦しさではない。
「理央くんなの……?」
「お前……なんで俺の名前を知ってる!?誰だ!!名乗れよ!!」
「お兄ちゃん、落ち着いて……僕が招待したの!!」
「どうゆう状況で、こんな女装家変態野郎と出会ったんだ!!警察官に突き返すまでだろ!!」
怒られて萎縮する、遥くん。
これはあまりにも、可哀想だ。
「僕の名前は、有馬っていうんだ」
起こり続ける、理央くんに被さるように僕はそう答えた。
「有馬……ご近所でも聞いたことがないぞ?この家内に何のようだ」
キッチンにあった、包丁を僕に向けた理央くん。
あぁ……完全に、覚えられてないんだな…。
どこからか胸のうちに、失望という言葉が重くのしかかる。
ーーそうだ!!
「僕は、実はね天界からやってきた蛇なんだ」
キョトンとした理央くんは、瞬時に刃物を構えて弟を後ろにやった。
「今すぐ出ていけ!!」
「まって!!話を聞いて!!僕はね、君たちが始めにかった白い蛇なんだよ!!」
僕は見られたくはなかったが、後ろを向きうなじを見せた。