とある蛇の話
「ッ!?何だお前……これっ!?」
「鱗が見えるでしょ?そしてこの目玉、君が幸せメーターに選ばれた証拠だよ」
「幸せメーター?蛇?天界?………頭が痛い……なんだコレ?俺は夢でも見てるのか?……遥、こんな奴親戚にいたか?」
「お兄ちゃん、この人は本当に天界から来た人なんだと思うよ……。僕も怖いけど……見たところ特殊メイクじゃなさそうですだし……」
「だとしても……本当に天界の人間ーーいや、蛇だったとしたら、俺達はどうしたらいいんだ?養うにも限度がある。っていうか、怖すぎる……」
動揺を隠せない2人に、僕は息を飲み込み告げる。
「追い出すことは、困るけれど……今すぐ殺されてもいいよ」
「!?お前……っ、何言ってる!!」
「どうしちゃったの!?有馬お兄さん!?」
訳が分からないと困惑した、表情を人間達からどれだけ見たことか……。
「天界の住人と地獄の住人は、もし人間に殺意を持たれて殺されても、その遺体は蒸発して存在そのものがなくなる。記憶もなくなってしまう。今存在してるっていう記憶がね」
「俺に……どうしろっていうんだ?」
「だから………その、僕とっても怖いけれど……もう弟を近づけたくないし、存在をも見たくもないというのなら、僕をその刃物で殺せばいい」
「……いきなり……そんな事言われてもよ……」
手に握り拳を作っていたせいか、手汗が滝のように溢れる。
震えが止まらないし、また理央くんに会えなくなるという気持ちが、僕を苦しめる。
いや、この気持ちは我儘だし、今すぐにでも消えてしまったほうが理央くんの為になるのかもしれない。
だけど、今この二人は完全には幸せではない状況というのは、見て取れる。
だって、遥くんは学校ではいじめられて、お父さんの死を引きずってるし、理央くんはお父さんの為に、バイトを死に物狂いでやっているんだもの。
それも、自分の時間を削ってやりたいことも犠牲にして、懸命に働いてるのを見ると可哀想でならない。
「でもね……僕を殺したら、理央くんの安否は保証できない」
「どうゆうことだよ……?」
「それって……、お兄ちゃんが幸せになるメーターが破壊されると、その因果としてどんな応報を受けるか分からないってこと?」
「飲み込みが早いね……そういう事になるんだ……ごめんね」
「ひどいよ!!有馬お兄さん!!自分から降りてきて、お兄ちゃんを巻き込んで、なおくせ、殺してほしいとか身勝手じゃないですか!!お兄ちゃんがどんな危険な目に遭うのか考えることは入らないんですか!?」
もちろん遥くんには、僕が理央くんに恋をして人間界に降りてきたことは言ってはいない。