とある蛇の話
でも……僕には、正体がバレそうだから僕は牙をたてる。
すると警官は驚いた様に目を剥いて、突き飛ばそうともがく。
一瞬だけでもいい。
その隙があれば、僕はこの牙で警官を眠らせる毒を作り出せる。
「はいはーい。喧嘩はストップよ!!何やってるの!!」
拍子抜けた、明るい声が聞こえた。
僕は我に返る。
目先にいたのは、虎柄を着た若い女性が立っていた。
「母さん……?!なんでここにいんだよ!!またその格好で、出向いてたのか!!」
「理央ったら、うるさいわねー。いいでしょ?今日は思いっきりオフな日なんだから、好きな虎柄を着て街を歩いても、弾劾される筋合いなんてないわ」
虎柄模様とは似ても見つかぬ言動は、僕の想像を超えてくる。
「夏目姉さん!?なんでこんな、狭苦しい場所におるねん!?」
警官は、僕を弾き飛ばし勢いよく立ち上がる。
「姉さんなんてやめてよ。私は一様貴方よりかは年下なのよ?」
「でもあんたは、前の交番勤務のエリートではどんな相手にも容赦はしない言動で有名な警官だったやん!!尊敬する対象に決まっとるわな」
「ちょっとやめてよ。昔の話は!!子どもも観てるのよ?」
苦笑いを浮かべる、2人の様子。
それを聞くと、どうやら本当だったみたい。
きっと辞めることがあったのは、事情があったんだろう。
……でも、そんなに驚かなくても。
正直ただの後輩なのに、どうしてそこまで怯えている警官なのかよくわからない。
これが知らないほうがいいっていう、秘密だったりするのだろうか。
知らないけど。
「……ところで、どうしてわいがここにおるっちゅうこと、知ったんや?」
「私の次男が、家内が大変なことになってるって連絡があったから、飛んできたのよ」
後ろを見ると、すごく引きつった顔で遥くんが、スマートフォンを掲げる。
っていうか、連絡するの早すぎない!?
僕と理央くんが警官と戦っている節に、そんな出来事があったなんてーー夢にでも思わなかった。
「こんな事情ないわ……わいはただ任務遂行しているだけやのに……こんなことになるなんて、きいてないわ……」
警官は小声でため息をつく。
主に僕のせいで、こんな怖いお母さんと八合わせることになるなんてなんとも気が重い。
ご愁傷さまです。
「近所のスーパーウロウロ詮索してたから、良かったけど……なんであんたがここに油売ってんのよ?」
「そりゃー、変な人が現れたっちゅー連絡があったからに決まってるわ!!」
顔を困らせて、またため息を吐く。