とある蛇の話
「ここにおる兄ちゃん、ちょっと検索せなあかんぐらい通報が入っとんねん。姉さん……ここは確かに譲ってくれんか?」
お母さんという人は、僕を一瞥。
「貴方、名前は?」
「え!?えっと……有馬です……」
「それに聞きたいのだけど、どうして2人してそんな洋服がボロボロなの?」
2人を交互に見つめ、問う。
「それは……あの兄ちゃんが……とんでもない勢いで襲ってきてーー今に至るんや」
苦し紛れにそう発言した、警察官。
「ふーん、なら……元エリートの私が飼いならすしか方法はないかもね」
「「え!?」」
僕と警察官は、同時に驚いた。
一方的、遥くんと理央くんは口を塞ぎ目が泳ぐ。
「弟が「事情ありで家の様子を言い立てた不思議な青年がやってくる」ってメールされたら、離すほうがおかしいでしょ?その甲斐あって、私は貴方を保護するわ」
手を差し伸べて、僕はお母さんの手を掴む。
「えっと……ありがとうございます……。なんと言えば……」
「夏目でいいわ。息子達をよろしくね」
「えっと……、わいの服装はどうしたら………」
「仕方ないから、私の夫の洋服を貸してあげるわ。早く上がんなさい」
警察官はヘコヘコと頭を下げ、2階へ誘導される。
ぼんやりとその様子を讃えていたら、背後から背中をささえられた。
「お前も、2階に上がれ」
支えていたのは、理央くんだった。
「有馬お兄ちゃんの格好も、なかなかおかしいですから……着替えたほうが、いいと思います……」
「え……あぁ。でも、勝手に着ていいのかな?」
「父さんは、母さんの意見に逆らえない事があったから、母さんがお前のこと認めてるんだからきっといいと思う」
そう言うと理央くんは、無理矢理僕を2階に引っ張って走る。
「お兄ちゃん!!まって、そんなに走ったら転ぶよ!!」
後ろから遥くんが、心配して負ってくる。
僕は服を着替えて、警察官とぎこちないサヨナラをしてやっとの思いで夜がやってきた。
「有馬くんだったっけ?」
それぞれの部屋に向かって、すやすや寝息を経てて睡眠に浸っている深夜の時間帯に声をかけられた。
リビングで一応寝ることになった僕は、ソファーでぼんやりと将来を考えていた頃だった。
「どう?調子は?」
相変わらずこの、夏目さんは虎柄が好きなのかパジャマにも刻印されているのを見て思わず吹き出しそうになる。
「ひどいなー、笑わなくてもいいのにー」
その様子を見て、夏目さんは怒る様子もなく怒鳴りつけることもない。
ただ笑って、その様子を楽しむようなちゃんとした大人に僕は感じる。
そんな人が、愛する人をなくす辛いことを背負っているんだから、世の中ってとても世知辛い。