とある蛇の話
「あ、もちろん二人のことが嫌いになったから、どうでもいいってことじゃないのよ。ただ、いつも3人で一緒にいるとき、何処か別々な道を近くにいるのに歩いている感覚が苦しいの。母親として、2人のことをちゃんと見れていない気がしてね。でも、無理やりこじけ開けようとすると、壊れてしまってもうもとに戻らないって気がするから、言う勇気もないの。貴方が来る前は」
「……そうなんだ………」
「でもね……、貴方がーー白いヘビが来たあの日から少しだけ、二人の様子に穏やかな変化が見られたの」
「……例えば?」
「そうね……理央は遥に付きまとわずに、蛇のことを図書館で調べて話を合わせようと勉強してたこと。遥は、蛇の餌を与えるために、理央のためじゃなくどんな虫がいるか外に出向いていた事かしら。とにかく、2人とも「自分自身の幸せ」の事について考え始めてた変化はあったの」
「僕のいない間に、そんな事が………」
「だから貴方がこの家に来たと知った瞬間に、私は賭けようと思ったの」
僕の手を優しく握って、包み込む表情はどこかの聖女を彷彿とさせる。
「わかった。僕頑張るよ」
「そう言っていただけて光栄だわ。さぁ、今夜は遅いからもう寝なさい。家賃は後払いってことで」
僕はにこやかに笑う、夏目さんを横目にソファーに横になって静かに眠る。
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