とある蛇の話
理央くんはやっぱり、許してくれない?
「俺はやっぱり、一緒に暮らすのは辞めたほうがいい気がする」
「どうしてよ?あの子がやってきてから、貴方は少し変わって遥から、独り立ちできそうなのに」
「遥は、まだ俺がいないと気が気でないんだよ。しかも頼まれたし……」
「誰に?」
「誰でもいいだろ!!」
そんな会話が耳に聞こえてきたのは、朝の6時。
薄暗いブルーの光が、辺りを照らして清々しい空気が入り込む。
薄く月が朝日に浮かんでいて、どこか弱々しい僕と似て非なる。
「あの……お取り込み中?」
夏目さんの夫のパジャマを着させてもらって、厚かましいとは思ったが二人の会話をきいていられなかった。
それは、僕が居づらいという理由もあるけれど、もう一つはーーー。
「お兄ちゃん、お母さん……僕が言い出したんだから有馬お兄ちゃんのお世話は僕がするよ……不安だけど……。でも、だから……その……追い出さないで」
齢9歳の男の子に世話を焼かせられる、宿命に切り札を使いたかったからだ。
「まだ、寝ててよかったのにー」
明るい顔をして、険しい表情など皆無だったかのように振る舞う夏目さん。
「おう。起きたか、有馬……だっけ?っていうか、まだリビングに寝かせてたのか?!早く警察にやっぱり預けたほうがいいだろ!!」
「お兄ちゃん、これは僕が撒いた種だから……責任は僕にある……だから、だから、怖いけど……お母さんを怒らないで……」
「母さんっ!!なんとか言ってくれよ!!遥に、こんな事言わせていいのかよ!!」
「大人には、事情があって、考えなしには動いてないのよ!!それなりに、対策は考えてるわ!!この子がペナルティーや、悪い事をしたら、家の倉庫に閉じ込めてやるんだから!!」
ふーん……って、え!!?
「僕はそんな事、しないよ!?」
「お母さん……!!有馬お兄ちゃんをいじめないでよ!!いくら何でも……確かに怖いけど……可哀想だよ……」
「母さん、それだけじゃ足りねぇーよ。不審者ってのはもっとーー」
「お兄ちゃん、お母さん……!!喧嘩はやめて……ほしいな………。そのーー」
この様に、朝から戦争が勃発しておりどうしたものか困りかねる。
「僕、そのーー蛇だけど、家族の為に何か出来ることを、今日決めてみるってのは、どう?」
恐る恐る、そう発言してみたら三人は顔を見合わせた。
「そうね……そうしたほうが、手っ取り早いかもしれないわ。じゃあ、あたしが決めてあげる」
「ちょ……っ!!なんで母さんがーー「お兄ちゃん!!ここはお母さんに任せようよ……」」
苦し紛れにそう呟いた、遥くんに歯向かうことはせず、理央くんは黙り込む。
「うーん、そうね……よし!!それじゃあ、遥のお迎えよろしく!!」
「あの……僕、もう小学生なんだけど………」
「母さんだって、過保護じゃないか!!」