とある蛇の話
「痛いっ!!辞めてよ!!」
学校の校門前だ。
「悔しかったら、やり返してみろよ!!このポンコツ野郎!!」
冬なのにも関わらず、半袖半パンを来た男の子が遥くんを殴っている。
周りにいた群れは、笑うだけで誰も手を差し伸べようとはしない。
「漣!!やっちまえ!!この変態野郎を倒せ!!」
子分であろう男の子が、漣と呼ばれる少年を動かしてゆく。
半袖半パンの少年の名前は、漣なのか………。
「君たち、辞めなよ!!」
僕は群れを掻っ切って、漣と呼ばれる少年から遥くんに覆い被さって守る。
「……?お前、見ねぇ顔だな?」
殴るのをやめて、僕と目が合う。
つり上がったか目つきや、筋肉質の体格がボスという風格を生み出している。
僕は不意に、あの上級天使たちに受けてきたイジメを今更ながらに思い出した。
胸がギリギリして、血液を絞り出されているかのような苦しい痛みが走る。
「何だお前?怖いのか?」
その顔つきをみられてしまった挙げ句、僕は漣に覗き込まれる。
「言っとくけど、俺中学生数人相手でも勝った事あるんだよねっ!!!」
瞬く間に顔に蹴りを入れられて、後ろに吹き飛ぶ。
口の中には鉄の味が広がって、血が滲み出している。
ーー前の警官のように、素早さで動ければ!!
僕は一歩前に踏み出すが、全身の力が大地に吸い込まれていくみたいに脱力。
そのまましゃがみ込み、血を吐き出した。
どうして……?
そういえば長い時間、人間界にいると魔力を消耗するのが早いときいたことがある。
僕は魔力を使いすぎと、長い時間この世界にいたから気力が持っていないのかもしれない。
力無く立とうと踏ん張るも、漣くんに飛び蹴りをされてまた仰向けに倒れた。
「クソ弱いな。お前?それでも中高生かよ?」
軽々と地面に降り立った漣くんは、誇らしげに僕を見下ろす。
「さて……」
漣くんはポケットから手をいれると、ナイフを取り出した。
遥くんの顔がこわばり、体を両手で抱えて膝から崩れ落ちる。
「やめて……今日は、その日じゃないじゃん!!」
「言い訳無用だ!!変な輩を連れてきやがって!!機嫌損ねた罰として、コイツを切り刻んでやる!!」
ーーそうか……絆創膏で切り刻まれた傷跡は、このナイフで痛めつけられた跡だったんだ!!
「でも、まずお前からだ。遥!!お前が前に来い!!その髪切り刻んでやる!!」
遥くんは、一歩後ずさった。
「どうした?怖いのか?」
周りが嘲笑って、誰も助けようとしない。
完全に見物として、楽しんでいる。
「まず最初に、この弱っちい兄ちゃんを、犠牲にするってか?お前って自分が助かればいいって言う魂胆なのかよ?最低だな!!」
ーー元々、喧嘩を吹きかけてきたのは向こうなのにーーこんなのおかしいよ!!
僕も、嫌という程いじめられてきたから遥くんが受けてきた、屈辱的な気持ちは痛いほどわかる。