愛を奏でるワルツ~ピアニストは運命の相手を手放さない~
翌日、お昼休みにスマートフォンを確認する。
すると見知らぬ番号から着信と留守番電話が録音されていた。
誰だろう、どうせ勧誘かなにかだろうと再生した。
『久しぶりだな、楓』
低く、落ち着いた声。
その声に、心臓を掴まれたような感覚になる。
だってこの低い声は。
『今、日本にいる。
急だが明日の夜に会えないか?
無理ならこの番号に電話をくれ。
大丈夫なら七時にホテルロビーで待ち合わせしよう。
当然、俺が贈ったブローチをつけてきてくれよ?』
ホテルの名前と場所、そして時間を再度言ってその留守電は終わった。
レンだ!
なんでレンが私の携帯の番号を知っているのだろう。
だがそんなことはどうだっていい。
嘘かと思ったけれど、この低くて少し甘さを含んだような声はレンに間違いない。
そしてブローチのことを言った。
それは、二人だけにしかわからない秘密。
私は録音を再生し、涙が浮かびそうなのを必死に我慢した。