愛を奏でるワルツ~ピアニストは運命の相手を手放さない~


打ち合わせはすぐに終わり、むしろインタビューを終えて出てくるところを観察する方に力が入る。
男性だけ三名のところは特に問題も無かったようだ。
ということは、標的にされるのは女性の場合。

そして私達の番である四時半少し前にリハーサルルームのドアの前で待機していると、谷本さんの知り合い達が出てきた。
時間的に会話する余裕は無い。
向こうも目線だけで、谷本さんは時計を確認する。
すると一旦閉まっていたドアが開いた。

「マネージャーのミア・高野です。
そちらの社名と名前を」

出てきたのはブロンドでウェーブのボブヘア、身長は170軽く超えていそうな美人。
身体に沿ったパンツスーツだが、細いウエストに豊満な胸とヒップ。
化粧はあまりしていないようだが、細い鋭い目が印象的に思えた。
外国人にしか見えないが、苗字が日本人のということは彼女もミックスなのだろうか、それとも結婚しているのかわからない

「雑誌「INFINITY」の谷本です。
カメラマンの池田、アシスタントの篠崎合計三名です。
今日はよろしくお願いします」

谷本さんが名刺を渡し、頭を下げると同時に私達も下げる。
マネージャーの高野さんは名刺を渡すこともなく、私達の顔を一通り無表情で見た後、どうぞと言った。

かなりの広さがあるリハーサルルームの奥、大きなグランドピアノが見え、その前に椅子が2脚ある。

近くで何かを飲んでいる背の高い男性。
私はレンがこちらを見る前に、谷本さんの後ろに隠れるように移動する。

「INFINITYの谷本です、よろしくお願いします」

谷本さんが立っているレンに近づき名刺を渡す。
レンは、軽く頷いて視線を上げる。
そしてパチッと私と目が合った。
不味い!レンの表情が変わるのではと思ったが、彼はそんなこともなく席に着く。
谷本さんも椅子に座り、隣にある小さなテーブルにレコーダーを置いて質問内容を書いた用紙を取り出しペンを持つ。

「インタビュー十五分、別取りの撮影十分でお願いします。
ではインタビューを始めてもよろしいでしょうか?」
「どうぞ」

レンは長い足を組み池田さんがカメラを構え、私は時計の時間を確認しストップウォッチをスタートさせた。

部屋の中はレン以外にマネージャー、そして外国人とおぼしき男性が二名。
特にマネージャーはレンでは無く私達を見ているが、監視されている気がする。

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