愛を奏でるワルツ~ピアニストは運命の相手を手放さない~
「今回ウチを選んでくれたのはレン?」
しばらくレンの胸にもたれかかったままでいたが、顔を上げて尋ねる。
「あぁ」
「やっぱり。
そうじゃなきゃうちが選ばれるはず無いよね」
「顔のアップの写真は無し、不愉快に感じるプライベートの質問も一切無かった。
そんな中で『オーストリアのワインとドイツのビールならどちらが好きですか』なんて質問が交じっていたら、気付いてくれと言っているようなものだろう?」
「いや、単純に疑問に思ったんです。
・・・・・・気付いてくれないかなって下心があったことは認めます」
深い青の瞳に覗き込まれ、私は素直に認めた。
そしてまだ入ったばかりの私が、こういう事が出来たのかも洗いざらい吐くことになった。
「なるほど。良い会社じゃないか」
レンは時折小さな笑い声を交えながら、私の話を聞いていた。
「うん。
でも私は熱烈なレンのファンと思われてて、失礼の無いよう釘を刺されました」
「違うのか?
CDショップの前で見知らぬ男を捕まえてでも知ろうとした、俺の熱烈なファンだと思ったが」
意地悪な笑みに、私は頬を膨らませて顔を背けた。
「そうですよ、とっくの昔に骨抜きですよ」
「それは光栄」
レンは余裕の声で答えると、私の左手を取って甲に軽くキスをした。
「さて、まだまだ聞きたいこともあるし、そもそもお仕置きを受けるために来て貰ったからな」
「え」
戸惑う私を無視し、レンが私の膝の下に手を入れ、抱き上げた。
「特別にピアノも弾いたんだ、その礼も実に楽しみだ」
美しい顔が、眩しいほどの笑顔を私に向ける。
だけど誰もが見惚れるほどの笑顔は、この後のお仕置きの大きさがわかり私は震える。
必死に謝る私の声は、広い部屋に消えてしまった。