愛を奏でるワルツ~ピアニストは運命の相手を手放さない~
あのウィーンで出逢ったレン。
目を奪われるほど格好いいと思った人は、一見無愛想ででも優しくて。
そして彼の無邪気さや悲しみを知り、恋に落ちていた。
そんな彼は夢中になったあのピアニスト本人で。
私は夢のような出逢いと恋に、ただ舞い上がっていた。
彼が築き上げた立場も、それを支えてきた人達の思いも深くは考えていなかったと、ミアさんに思いをぶつけられ思い知った。
レンの事が好き。大好き。
だけど、それだけで良いのだろうか。
気が付けばレンが私の側に来て抱きしめていた。
抱きしめてくれる腕に手を掛け、私は俯いてしまう。
「楓、愛している」
耳元で、低く、そして切なげな声が響いた。
私を抱きしめる力が強くなり私が顔を上げると、苦悶を押し殺すかのような表情のレンが見ていた。
「私も大好き」
知らずに涙が浮かんでいて、レンは私に口づけた。
けどそれは軽い物では無く私の頭の後ろに手を回すと、全てを喰らうかのようなキスが続く。
「ふ、う」
必死に息継ぎをしていても、レンは止めようとしない。
私がレンの背中に回した手がずるりと落ちると、レンが私を覗き込んでいる。
サファイアのような青い目には、炎のようなものが揺らめいていた。
「離さない」
ぐったりしている私をレンは抱き上げベッドに運ばれる。
横たわった私をまたぐレンは無造作にシャツを脱ぎ捨て、適度に鍛えられた身体が露わになった。
レンの手が私の服に伸びてくる。
「俺から離れることは許さない」
一つ一つ、私のシャツのボタンが外されていく。
今は何も考えたくは無い。
レンは私の胸元に強く口づける。
何度も繰り返している彼の髪を、私は涙を浮かべながらそっと撫でた。