愛を奏でるワルツ~ピアニストは運命の相手を手放さない~
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ネットで既に話題になっていたレンだが、コンサート直前に放送されたテレビ局のインタビューでより注目の的となってしまった。
モデルや俳優としてでも通用しそうなルックスに、低い声。
日本語も堪能どころでは無いので、それも驚かせたようだ。
既にモデルか俳優のような扱いで、ピアニストというのはおまけにすら見える。
こんな状況をレンは知ってしまっているのだろうか。
それが彼の心をまた疲弊させていないか心配だった。
レンを生で見たいという声は当然のように溢れたが、数日後に行われるコンサートのチケットはとっくの昔に完売。
それもあっという間だったというのがネットでも書き込みされると、余計に興味を煽るのか次こそは行きたい!と盛り上がり、テレビやネット記事でも次のコンサートはいつになるのかと色々な憶測が飛び交っていた。
「いやー、売り方が上手いわよね」
谷本さんと取材先帰りに外でランチをしていると、しみじみとそんなことを言った。
私も同意見で頷く。
レンをこういう風に扱われるのはもちろん嫌だ。
しかし商売という点で見れば、これだけの注目を浴びているのだから大成功だろう。
「普通なら話題を集めてからチケット販売ですよね。
なのにここまで切望されるなら、次々にオファーが入ってるだろうなと」
恐らく次はオーケストラとではなく、単独のコンサートになるだろう。
マスコミを飢えさせ、そして新たなファン達も飢えさせる。
話題に上がっているときに次のコンサートを決め、また話題にさせる。
本当に上手い売り方だ。
「あのマネージャーは個人的には苦手だけど、あの手腕は素晴らしいわ。
レンが欧米でより有名になれたのも、彼女がマネジメントチームに入ってからみたいだし」
やはり彼女の能力は凄い。
それはレンを有名にしたいという夢に終わらせること無く、実際に叶えてきた。
彼女は日本でもそれを成功させている。
レンのコンサートが終われば、もっと話題になるのは間違いない。
彼女はレンにとって必要不可欠な人材。
それに比べて私は。
私は、彼に何をしてあげられるのだろう。
彼の側にいる価値が私にあるのだろうか。