俺様御曹司は十二歳年上妻に生涯の愛を誓う
第一章 俺様御曹司
ここはアメリカ、ロサンジェルス。

ホテルの一室でベッドに横になり、スマホの待ち受けを見ていた。

待ち受け画面の彼女は、俺に微笑みかけているのではない。

でも俺は毎日スマホの待ち受け画面の彼女に向かって、待っててくれと

語りかけていた。

優しい表情、三十五とは思えない可愛らしさ、控えめな雰囲気。

俺は一目惚れをした。

アメリカには親父が作り上げた仕事のノウハウを学びにきた。

「お前は社長を目指すんだ」

そう言われてアメリカにやってきた。

日本の会社の休憩室で彼女とたわいない会話を交わし、偶然を装い彼女との時間を

過ごした。

彼女との距離が近づいたと思った時、俺は渡米をすることになった。

あまりの急な出来事に、彼女に気持ちも伝えられず、渡米のことも言えなかった。

彼女はなんて思っただろう。

いい加減な奴と思われただろうか。

アメリカでの生活は予想を遥かに超えるほど過酷だった。

右も左も分からず、仕事も初心者同然だ。

まずは言葉が通じない。

こんなことなら、ちゃんと英会話を勉強しておくべきだったと後悔した。

唯一アメリカ支社で働いている日本人の女性の先輩がいた。

鏑木建設アメリカ支社勤務、大橋真理子。

俺は彼女に頼っていた。

俺より一回り上と言っていたから、日本にいる彼女と同じ年なんだろう。

「鏑木くん、まじめに仕事する気あるの?」

「あります」

「社長から思いっきりしごいてくれって言われてるから、使い物にならない時は、
日本に帰ってもらうから、社長就任は諦めなさい」

「俺の中に諦める選択肢はないですから」

「そう、頑張る理由がありそうね」

そうだ、俺は社長就任をして、日本にいる彼女にプロポーズするんだ。

「もしかして、彼女?」

「いえ、まだ彼女じゃありません」

「えっ、片想いで日本に置いてきちゃったの?」

「はい」

「三年よ、ダメなら五年、彼女、待ってないわよ」

「そうですかね」

「若い子は側にいる男性を好きになるのよ」

「彼女は三十五歳です」

大橋先輩は目を丸くした。

「私と同じ年?」

「先輩も三十五歳ですか」

「ち、違うわよ、女性に年齢聞くなんて失礼よ」

「すみません」

それから大橋先輩のしごきが始まった。

そんなある日、夜空を見上げると、流れ星が……

俺は咄嗟に願った。

待っててくれと……

俺は頑張りすぎたのか体調を崩して、熱を出してしまった。

意識が朦朧とした俺を大橋先輩は看病してくれた。

やばい、鏑木くんをかわいいと思っちゃった。

私は日本に残された彼女の気持ちが、なんとなく分かった。

きっと待ってるわね。

次の日、俺は熱が下がったのか、身体がだいぶ楽になった。

ベッドに寄り添ってくれていたのは大橋先輩だった。

「先輩、大橋先輩、うたた寝してると、今度は先輩が風邪ひきますよ」

私は元気になった鏑木くんの姿に、嬉しくなって、抱きついてしまった。

「先輩、ありがとうございます、俺を看病してくれたんですね」

先輩は急に俺にキスをしてきた。

咄嗟のことに避けられなかった。

でも、ゆっくりと先輩の身体を離して自分の気持ちを伝えた。

「先輩、すみません、俺、先輩の気持ちに答えられないです」

「わかってるよ、ちょっと鏑木くんがかわいいって思っちゃったの、
日本にいる彼女とどうやって知り合ったの」

俺は先輩に話し始めた。

日本にいる彼女、それは藤城美希。

そして俺は鏑木蓮、鏑木建設会社の御曹司である。

親の脛をかじり、何も考えずに遊んでばかりいた。

親父の会社は継ぎたくないと、バイトの日々を送っていた。

そんな俺に喝を入れるかの出来事が起こった。

バイクで事故を起こし、意識不明の重体に陥った。

しかも俺はRHマイナスの血液型で、普段から親父に懇々と言われていた。

事故を起こして、輸血が必要な状態は避けなければいけないと……

俺は輸血が必要なくらいの重症だった。

しかもたまたまRHマイナスの輸血パックが足りないと言う事態に陥った。

俺の命もここまでかと思った矢先、輸血を申し出てくれた人物がいた。

俺の命の恩人、藤城美希だ。

俺は目が覚めたとき、俺の顔を覗き込んでいたのは東條だった。

< 1 / 316 >

この作品をシェア

pagetop