もふかわ生徒会長は、求愛コントロールができない


顔面蒼白の私。

絶望に襲われながら、自分の席に座る。


その時、バコンと鈍い音が響いた。

ふと横を見ると、美記ちゃんが立っている。


手に、丸めた地理の教科書を持って。

ゆら君を、怒り顔で睨みつけながら。



「痛かったんだけど」



上半身を起こしながら、ゆら君は頭の後ろをさすっている。



「あんたさ、何意味わかんないことを海花に吹き込んでんの?」



私は慌てて、美記ちゃんに駆け寄った。



「美記ちゃん。ゆら君の頭を丸めた教科書で叩くなんてダメですよ!」


「だってこいつさ、海花の優しさってもんを全く理解してないじゃん」



美記ちゃんは、ゆら君を叩く手を止めようとはしない。



「だから、頭叩いちゃダメですってば」



私は必死に、美記ちゃんの腕にしがみついた。


椅子に座ったままのゆら君の、無気力声が届く。

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