もふかわ生徒会長は、求愛コントロールができない
「海花は、まだ来てないよね?」
待ち合わせの時間よりも、10分以上も早いし。
俺は柿崎さんの方を見る。
「さっき、焦り顔でシャツにアイロンをかけていました」
「アイロン? 海花は毎晩、俺の制服にアイロンをかけて部屋まで届けてくれるんだよ。自分の制服にアイロンをかけるついでだからって言って」
アイロンをかけ忘れたとは、思えないんだけど。
「背中側のちょっとしたシワが、気になったようです」
ほんと真面目だなぁ、海花は。
「ブレザーを着ちゃえば隠れちゃうのにね」
「自分の身だしなみが崩れていると、月見家の品位が疑われるからと言っていました」
「そっかぁ」
「メイドとしての責任感が強すぎなんですよ。メイド長のお母さんそっくりに育って、たくましい限りです」
相変わらず柿崎さんは、抑揚のない真面目ボイス。
だからこそ、俺は柿崎さんの言葉が嬉しくなった。
俺以外にも、海花の良さをちゃんとわかってくれている人がいることに。