君にかける魔法
卒業生が終わった。
生徒達は教室に戻っていく。
最後のHRだ。
先生はまだ来ていない。
私は目の前の席のクルミに声をかける。
「クルミ、」
「あいつ、やったわね」
クルミも気づいてた。
髪の毛は短くなっていたけど、すぐに分かった。
ガラガラと教室のドアが開く。
クラスが一気に賑やかになる。
「ただいまー!」
髪がショートヘアになって、大人っぽくかっこよくなったナツキだった。
みんな正装をしているのに、1人だけブレザーではなくニットを羽織っていてより悪目立ちしていた。
でもそんなことはどうでも良くて、
「私の席変わってなかった。」
「なんで…」
私の隣にナツキが座る。
「待って。私一応、生徒だからね?ここの」
こうなったことには理由がある。
高校3年・夏
「受かったよー!」
夏休みの最初の方だったと思う。
ナツキは行きたかった海外のダンスの学校に合格した。
「おめでとう!」
一緒に喜んだ。
だけど、
「私、9月から入学するんだ。」
海外の学校は9月入学すると、聞いたことがあった。
今の高校は通信科に変更して通うと言っていた。