君にかける魔法
「どうせ、お姉ちゃんまだ来ないよね?」
「さぁ…」

机の上に置いていた腕を掴まれた。

「ん!」

反対の手の親指をドアの方をさして、ナツキは私の腕を引き、歩き出す。


廊下に出ると、人の間をすり抜けてどこかへ走り始める。





たどり着いたのは、旧校舎の空き教室だった。

「ここなら誰も来ないでしょ」

確かに、卒業式の日にわざわざボロボロの校舎に足を踏み入れる人はいない。

空港に行けなかったあの日から、私は気まずすぎてLIN○すら送れていなかった。

2人だけなんて尚更気まずかった。

でもナツキは何も変わってなかった。



「…ごめんなさい」



「な、なんで謝るの!?再会じゃん、」

私は頭を上げることが出来ない。
自分が馬鹿すぎて、
意地を張って、無駄にプライドが高い。

それなのに、あの頃と変わらない眼差しを私に向けてくれる。

どこまで優しいんだろう。


「私、お見送り行けなかったし、連絡も、無視して、…」

「もう、今更?ほーら」

ナツキは私の肩を元の位置に戻し、起き上がらせる。
下を向いたままの私の頭を優しく撫でてくれる。


「そんなことで、私が嫌いになると思った?」

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