君にかける魔法
「電車ないからね、始発までは居させてもらうからね」
ナツキはビール缶を飲んでいる。
ナツキの前には、既に飲み終えた缶が4本くらい置いてあった。
三半規管弱かったはずなのに、アルコールには強いんだ。
私よりも強いのかっ!
少しその現実にショックを受けてしまった。
それにしても会うのは7年振り。
何から会話をするべきか、よく分からない。
ナツキは上着のポケットから1枚の紙を取りだし、それをテーブルに広げる。
『国立○○歌劇団 新入団員 星川 奈月』
「私、日本で役者します!」
それって、つまり、
「もう離れないよ」
「ナツキー!」
こんな夜中なのに大声を出してしまった。
私はナツキに思いっきり抱きついた。
ナツキはその勢いでよろける様に床に倒れた。
「嬉しい。寂しかったよ……」
「うん、私も…」
2人で抱きしめあった。
7年も離れていたのなんて忘れてしまうくらい、最高の時間だった。
「…ねぇ、覚えてる?」
「…ん?」
2人でベッドの中で手を繋いで向き合う。
外はまだ暗くて、そしてあたりは静か。
部屋の中には2人しか居ないのに、小さな声で話す。
「次会うときは、夢叶えておこうって…」
「覚えてるよ…」
「良かった…覚えててくれたんだ…」