君にかける魔法
仕事に集中していたら、あの2人を見失った。
緑さんにバレないよう少しだけ目線をあらゆる方向に動かす。
(いた!)
店を出ようとした時、その2人がそっと手を繋ぎ合うのが見えた。
私はその2人を見えなくなるまで目で追ってしまった。
私もあんな恋、だ、めかな……
少しずつ鼓動が大きくなる。
「初ちゃん」
「え?」
「しーっ」
私の唇にあたる柔らかい感触。
本棚で死角になり、お客様にはバレていない。
唇が離れると、緑さんは顔が真っ赤になっていた。
顔を、私の耳元に寄せてくる。
「好き」
私の恋はこれから始まるみたい。
《END》