君にかける魔法
「なんか楽しそうね」
調理担当の片付けが終わったのか、早見さんが1人で突っ立っていた私に声をかけてくれた。
「スミカでいいよー、モモちゃん真面目すぎ」
「分かった、ありがとう」
担任が来るまで帰るのは厳禁。
「あっちに座ろう」とスミカちゃんがいってくれたので、黒板の下の少し床が上がっているところに座ることにした。
教室には今はお客様用の椅子が数個しかないから。

「ねぇ、何があったの」
「えっ」
ナツキのことだろう。

今日、全然話してない…

クルミちゃんも結局来なかった。
チア部は明日の体育館での発表のため既に教室にいない。

「それが、私にも…」
「そうよね、ナツキとクルミ、ね……」

そういえば、スミカちゃんは1年生の時ふたりと同じクラスだった。
何か知っていることは無いのか聞いてみることにした。

「思い当たること何かあったりはする?2人の力になりたいの。」

今日の異様な雰囲気のナツキ、連絡すらも帰ってこないクルミちゃん。

「まぁ、見ていればわかると思うけど…」

1呼吸おいて、私の耳元にひっそり話す。


ある日感じた

あの冷たいクルミちゃんの視線の意味だ。


「でもそれだけだったら今日来てる。それだけじゃないんだよ。」
「あ、そっか。」


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