君にかける魔法
3
学園祭が終わり、普通の高校生活に戻る。
振替休日を挟み、学校は始まる。

窓際の席でぼーっと外を眺めていた。
まだまだ暑い。
窓のフレームに当たる日差しが眩しい。
残暑が厳しい夏だ。

クラスがなんだかザワザワするのを感じ、私は後ろを振り返った。
見慣れないシルエット、人が多くてよく見えないけど…

人混みをかき分けてこちらにゆっくりと歩いてくる。

「モモ、おはよう」
「クルミ!?」

長かったはずのクルミの髪の毛は、ウルフカットになっていた。
大人びた雰囲気も相まって、アンニュイな感じになっている。
少しメイクもしているみたいだ。

「どうしたの…髪…?」

「私なりのけじめだから」

清々しい顔でクルミはそう言った。
足に負荷をかけないように席に着く。

「すごく似合ってる!」

思わず口に出してしまった。
だって本当のことだから。
失礼かもしれないけど、今の方がクルミらしいと思う。

クルミは優しい笑みで
「ありがとう」
と言った。

遅刻ギリギリで来たナツキも、クルミが髪を切ったことに驚き、なんで切ったのとか質問攻めしていた。
2人が元に戻ってよかった。
元に戻ったというか、何かが吹っ切れたのかも。
< 56 / 154 >

この作品をシェア

pagetop