君にかける魔法
何の変哲もない日常。
でも今は少し楽しい。

「ソノ。」
「何で…っ」

きっと誰にも見られていない。
人通りも少ないし。

青葉さんの顔が近づくのがわかった。
私は目をスっと閉じた。

唇に柔らかい感触が当たる。
息が出来なくなりそうになる。

少し離れると今度は舌と舌が触れ合う。
体に力が入らなくなりそう。


「少しだけ会えない分、今日…ダメ?」


青葉さんに抱き寄せられ、耳元でそう囁かれる。

「…ダメ、じゃない……」

本心なのか、雰囲気に呑まれたのか、自分でも分からなかった。

青葉さんについて行く。

私は一夜を彼と共にすごした。










気づけば朝だった。

目を開けると見慣れない部屋。

(あぁ、私……青葉さんと………)

ゆっくりと起き上がり、綺麗に畳まれた服を着る。
鏡に写る自分の姿に恥じらいを感じる。

この姿を見られたのだなと思うといてもたってもいられない感情でいっぱいになった。

コンコンっとドアをノックする音が聞こえ、服を着た。


「おはよう、朝ごはん食べる?」
いつも通りの青葉さんだった。

昨日のあれは…別人?
多分こんなこと考えているのなんて私くらい?

私はお言葉に甘えて、朝ごはんをいただくことにした。
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