君にかける魔法
運動神経が良いナツキは、私が走ったところですぐに追いついた。
廊下をそんなに走るものだから、周囲の人が私たちをみてザワザワし始める。

ナツキは私の手を引き、空き教室に入る。


バンッ…


勢いよく閉めたドア。

ドアにもたれ掛かる私。

すごい形相でわたしを見るナツキ。



「ハァハァ…」
「ッ、ハッ、ハァ…」



走ったせいで荒くなった呼吸音だけが聞こえる。


ナツキの右手が私の顔のすぐ横に来る。



「モモ、今日おかしいよ。どうしたの?何か私、悪いことしたかな」


私の目からこぼれ落ちる涙。

なんで泣いてるの。

「えっ…」

ナツキも状況を読み込めていない。

どんどん涙が溢れ出す。


授業開始を知らせるチャイムがなる。

2人の空間にはそれは届かない。


「泣いててもわからないよ…」


ナツキが痺れを切らしたような態度をとる。





「…んっ」

「…っ」


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