君にかける魔法
離れたくない。
私だけのものにしたい。

でもそれは無理なんだ。


「…っはっ……」

「んっ……」

精一杯背伸びする。

足が疲れて倒れそうになる。



バサッ……



私はナツキに覆い被さるように、倒れ込む。

離れない。


私は狂ってた。



繋いだ手、

指先一本一本から感じる体温、

荒い息、

触れ合う唇、


全てがこのまま続けば良いと思った。



ナツキが唇を離す。

正気を取り戻した。


「ご、ごめん。」

「モモ…なんで」
「ごめんね……」

泣くことしかできない。

ナツキはすっと立ち上がる。


「先生に具合悪そうでしたって言っておくから、落ち着いたら、来て」


そう言って教室を出ていった。

私はなんてこと……

涙が溢れて止まらなかった。

1人壁を背に座り込む。


こんなことなったのは私のせい
全て私だ


その日私は早退した。
誰が見たって様子がおかしい私に、先生はとても心配してくれた。
親には迷惑をかけたくなくて、自力で帰ると言って連絡はやめてもらった。

家に帰ってひたすら寝た。
実際は寝られなかった。
ひたすら天井をぼーっと眺めておくことしか出来なかった。
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