君にかける魔法
少し目線を動かすと、机の上に出しっぱなしのチアダンス大会のチケットがあった。

私はゴミ箱の方を向き、腕を動かした。

コトンっと音がする。

もう終わりだ……

目を閉じる。

何もかも消えてなくなってしまえばいい。





現実は残酷だ。
夢なんか見させてくれない。
それを作り上げているのも私。
全ての原因は私にある。

「モモ、体調、大丈夫?」

次の日、なかなかベッドから起き上がることが出来なくて学校を休んだ。
お母さんにも心配をかけさせてしまった。

「お母さん…」
「何かあったの?」

心配かけたくない……

そんな気持ちとは裏腹に、大きくなる『好き』という感情。
私は好き

ナツキのことが、好きなんだ。

口に出してしまえばきっと楽だ。

お母さんは泣いている私の頭をそっと撫でてくれた。

「モモは昔から器用で、真面目で、良い子だから。何も心配いらないからね。困った時は、いくらでも頼って、良いんだからね」

優しくしないで欲しい。
いっそうのこと、誰でも良い。侮辱して、否定して、私をボロボロにして、
そしたら新しく生まれ変われるかな…

なんて馬鹿なことを考えて、泣き疲れたのか、私は眠りについていた。



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