君にかける魔法
「ごめん、少し御手洗だけ行ってくるね」
「分かった」

開会式が終わり、照明も元通りに付いたので御手洗に行った。


ナツキ達の出番はもう少しあと。
今頃練習しているのかな…



「モモ…」

「ナツキ…」


廊下でばったり会ってしまった。

いつもよりもっと高いポニーテール。
大会用の目力を強く感じるメイク。
雰囲気が違う。

上がる口角。

優しい笑顔。

「来てくれて、ありがとう」
「うん。」

なんて話せばいいのかな。
実際に面と向かって話すのは一週間以上ぶりだ。
少し通路の端の方に寄る。

「具合、大丈夫…?」
「うん。昨日休んだから…なんで知ってるの?」
「クルミが教えてくれて」

話してなかったのに。
こんなに話せるだけで嬉しい。

「…やばい、ゆったりしてらんない!ごめん!行くね!」

「ナツキっ!!っ」


上手く笑えたかな…


「応援してる!!」


頑張っていたのは分かる。
だから今更、頑張れなんか言わない。


「ありがとっ!」


最高に輝いてる。

いや、今からもっと輝くんだ。








「クルミどうしたの?」
「あー、私が緊張する…佐々木の表情硬かったし、久保ちゃんたまに早取りするし、あー白井さんとみずちゃんのジャンプ心配ー、あー…」

クルミ、隣の後輩たちビビってるからやめて…
と思いつつ、うちの高校の登場アナウンスが場内に鳴る。

どんどんと人が入ってきて、最後にナツキが入場し、センターに立つ。
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