【改訂版】貴方は悪役令嬢ですよね? ─彼女が微笑んだら─

1【王太子】リシャール

その噂を教えてくれたのは、弟の第2王子のシャルルだった。


「クロエが悪役令嬢?」

「そう呼ばれています」


シャルルは俺より2学年下だ。
高等部1年の弟が知っている噂を、生徒会長である俺は知らなかった。


「悪役令嬢、って……
 何年も前の流行りだろう?」

「今回で、約20年振りの第3次らしいです。
 学院に平民の女子が居ると、その噂になるんですよ」



流行は20年サイクル、ってどこかで聞いたような気がするな。
平民の女子……しばらく考えて俺は思い出す。
あれ、か。
優秀だと教会からの推薦で、去年貴族学院の2年生に特別編入してきた、あの女。



ブリジット・ビグロー。

『BB、と書いて、ベベ、って呼んでくださいねっ!』なんて、にっこり笑って言った女だ。
その手は、初対面の俺の腕を触って……


俺が身体を引いたのと、護衛のアンドレがビグローの手を叩き落としたのは、ほぼ同時だ。


「いったーい!何するんですかぁ」

「何をだと!
 殿下の御身に触れるな!」
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