【改訂版】貴方は悪役令嬢ですよね? ─彼女が微笑んだら─
「君の事は、以前から気付いていたんだ。
 火曜日以外の昼休みには、こちらを見ていただろう?
 だから、姿が見えない火曜日には何か用事があるのかと思っていたら、まさか君が苛めの被害者だったとはね」



助けていただいたあの日から、殿下にはお声を掛けていただくことが増えました。


音楽室の苛めの事を、生徒会に投書してくださったのは一体どなたなのでしょう?
中等部の生徒会室前には、相談箱が設置されておりました。
生徒会や学院への要望や校則や行事に対する感想等、何でも良いから『声』を届けて欲しいと、殿下が生徒会長になられた折りにその箱は置かれたのでした。

皆の声を聞くこと。
将来国王陛下として、この国を治められていくにあたって、中等部の生徒会から始めるのだと、殿下は仰せになられました。


「彼女と、いつもそんな話をしているから」

彼女とは、幼い頃からのご婚約者のモンテール侯爵令嬢クロエ・グランマルニエ様の事でしょう。
王太子殿下に憧れるご令嬢方は数多く、皆様は殿下と侯爵令嬢が政略で有り、お互いに愛情など無いものだと信じていたいようでしたが。

失礼ながら私には、少なくとも殿下はクロエ様に対して、好意以上のお気持ちをお持ちなのだと見て取れたのです。
それはクロエ様の事をお話になる殿下のご様子からも察することが出来ました。
とても柔らかな表情で、愛おしげに『彼女』と、お呼びになるのです。
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