【改訂版】貴方は悪役令嬢ですよね? ─彼女が微笑んだら─
「大体、こんな感じかな。
 本当にド定番だね?」


シャルルは可笑しそうに笑っているが。
俺は笑えない。
確かに、オリジナリティも捻りもない、ド定番な悪役令嬢の所業だ。


こんなバカみたいな噂を信じるやつが居るのか?
それが噂として広まっている、その事も問題だ。
だが、今はそれよりも。
優先すべきは婚約者のクロエで……


「殿下!」


ほら、来た!
今日は王城で王太子妃教育のある日で。
クロエ嬢が来てるんだよ。
講義の後は、俺と彼女の親睦の茶席が用意されている。


「殿下! リシャールっ!」

物凄い勢いで。
クロエがこっちへやって来る!
右腕をぐるんぐるん振り回しているよ!

それを見たシャルルとアンドレが俺から離れようとする。


「一発殴ったら、それで気が済むんですから」

素早く立ち上がり、後退りし始めた俺に。
先に立っていた癖にシャルルが言う。
俺の背後に居たアンドレは護衛の筈なのに、俺から離れようとするのは何故だ。


「殿下は抵抗なさらずに、素直に殴られてください」

アンドレ、護衛の心得は?
忠告のつもりか? その言葉忘れないからな!


王太子殿下の弟と護衛だぞ?
怒れる婚約者から身を挺して、俺を護る気概は無いのか?
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