【改訂版】貴方は悪役令嬢ですよね? ─彼女が微笑んだら─

12【義弟】ジュール

ずっと考えていた事があった。

僕が今居るこの世界は、本物じゃないんだって。

ここは物語の世界。
僕も奴らも、その中の登場人物。
僕の役柄は子爵家の妾の子。
母が死んで仕方なく、子爵は本宅に引き取った。

母に似た僕は子爵夫人や、その子供達の憎しみの的で、父も使用人達もそれを見て見ぬ振りをしていた。



だから、いつか。
この物語は終わる。

辱しめや痛みや……
それらが、奴らから僕に与えられてるのは。
それが僕の役割だから。

優しさや抱擁や……
それらが、奴らから僕に与えられないのは。
この物語の主人公が僕じゃないから。


早くこの物語が完結すればいいのに。
ずっとずっと。
そう思っていた。


貴女がこの物語に現れるまで。



貴女はある日、父親の侯爵閣下と登場した。
僕は貴女達に会わないように、離れに行かされていたけれど、会ってしまった。

前日の夜にあの女に折檻されて出来た頬の傷に触れながら、貴女は言ったんだ。

『私の家族になってくれないかしら?』って。


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