【改訂版】貴方は悪役令嬢ですよね? ─彼女が微笑んだら─
「入学後のオリエンテーションで、その説明を受ける。
 途中編入の場合は、校内案内で説明される」

「……」

黙ったあたしに次に聞いてきたのはドミニクだ。


「それから、噴水に突き飛ばされた、だった?
 君はびしょ濡れだったらしいけれど、何処の噴水だった?」

「中庭のよ! 中庭の噴水!」

「やっぱり中庭か、ほら、こっちに来て見てごらんよ。
 上から噴水が見えるから」

ドミニクが笑いながら先に窓側へ歩いて行って、私を手招きする。
その笑顔にホッとしながら。
あたしは音楽室の窓から下の中庭を覗き込んだ。
中庭の中心には、噴水があって……え?
噴水は形だけそのままなのに、水が入っていなくてカラカラの底を晒していた。


「上から見たら一目瞭然、ってヤツだろ?
 中庭の噴水が噴水じゃないのは10年くらい前からで、君はそんなことも知らなかったんだね」


ゲーム内で彼等と逢瀬を繰り返した中庭の噴水は水をたたえていた。
中庭はあたしの学園生活に欠かせない場所だったけど、この世界じゃデートイベントもなくて、あんまり来ていなかったの。
だから横目で噴水があるのは見ていたのに、水飛沫が上がっていたかなんて、ちゃんと見ていなかった!
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