魔界の王子様は、可愛いものがお好き!
「ん? 人間の子供?」
「!?」
瞬間、男と目があって、びくりと肩がはねた。ギョロリと動いた目に、身体が凍りつく。
すると、そのヘビ男は、俺の姿をじっくり見たあと
「あぁ! その人形は、シャルロッテ! なるほど、人間の子供に化けてらっしゃるのですね!?」
顔を明るくして、意味のわからないことを言いだしたヘビ男に、俺は困惑する。
何言ってんだ、このオッサン?
「さぁ、さぁ、今すぐ帰りましょう~!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!?」
だけど、その後、ヘビ男が俺の目の前まで飛んできて、俺は、ミーを抱えて慌てて二階へ逃げ出した。
「フハハハハハハハハ、逃がしませんよぉぉぉぉぉぉ!!」
「ひいいいいぃぃぃぃ!?」
え!? 何これ!!
怖い! 怖い! 怖い!!
もう、何が何だかわからなかった。
背後からは、不気味なオッサンが笑いながら追いかけてくる。しかも、空中を飛びながら!
だいたい、お化け屋敷に死体が埋まってるって話は聞いたことあるけど、コスプレ男が追いかけてくれなんて、一度も聞いたことない!
「みゃー」
「ミー、ジッとしてろよ!」
飼い猫のミーと、女の子の人形を手にしたまま、俺は死ものぐるいで逃げまわった。
だけど、追いかけられるまま二階に逃げてしまったから、簡単には出られない。
窓から逃げようとも考えたけど、ここは2階だし、走る速度を落としたら、きっと男につかまる!
「(どうしよう、早くどこから逃げないと)──うわあッ!?」