魔界の王子様は、可愛いものがお好き!
だけど、廊下の角を曲がった先で、何かにつまずいた俺は、豪快に転んでしまった。
かろうじて、ミーは抱きしめていたけど、人形は廊下の隅に転がって、そして、倒れこんだ俺の目の前に、ベビ男が容赦なく立ちはだかる。
「さぁ! 今すぐ魔界に帰りましょう、アラン様!」
(ア、アラン……さま?)
な、何をいってるんだろう?
俺の名前は颯斗だ。
アランなんて名前じゃ……
──ガシッ!
「うわっ!」
瞬間、俺の身体が宙に浮いた。
気がつけばヘビ男の肩に担がれていて、足が宙に浮いた瞬間、俺は一瞬にして青ざめる。
「な、何すんだよ!?」
「何をするではありません。これ以上ワガママをいうと、魔王様に、お仕置をされてしまいますよ。さてはて、一体どんなお仕置がまっているやら、火あぶりですかねー。それとも、釜ゆででですかねー」
「火ッ!?」
火あぶり!? 釜ゆで!?
なにその拷問!?
ていうか、俺があうの!?
(ま、マズイ……ッ)
ダラダラと、嫌な汗が流れる。
魔界とか、魔王とか、意味がわからない。
だけど、一つだけわかるのは、俺がアランって子に間違われていて、そのアランって子の代わりに、魔界につれていかれて、火あぶりにされるかもしれないってこと!
「ちょ、ちょっと待って! 俺は、アランじゃない!」
「なにをおっしゃっているのですか。私がアラン様を、間違えるわけないじゃないですか」
いや、まちがってるよ!
めちゃくちゃ間違ってる!!
大体アランとハヤトじゃ、一文字すらあってないから!!
「さぁ、行きますよ。アラン様」
「わッ──」
すると、ベビ男が、コウモリみたいな翼をバサリと広げて、飛び立つような体勢になった。
(え、嘘だろ……ほんとに?)