魔界の王子様は、可愛いものがお好き!
そういうと、シャルロッテさんは、ソファーの横にあるテーブルを見上げた。
「カールって?」
「カールは、私の相棒よ。でも、魔界から逃げ出す時に、大ケガをしてしまって」
テーブルの上には、シャルロッテと同じ大きさの人形があった。
執事のような黒服を着た男の子の人形。だけど、その体はボロボロで、胸のあたりには大きな穴が開いていた。
「うわ、ひでぇ」
「胸の傷だけでも治してくれないかしら? ハーツが丸見えだと、心配でしかたないわ」
「ハーツ?」
「中に埋め込まれている赤い球のことよ。私たちは、アラン様に命を与えられた人形なの。でも、この”心臓”が壊れてしまえば、死んでしまうわ」
カールと呼ばれた人形を手に取れば、確かに中に赤い球が見えた。
ビー玉くらいの大きさのキラキラと光る赤い――心臓。
(じゃぁ、さっき、あのヘビ男が言ってたのって……)
きっと、シャルロッテの中にもこの赤い球が入っていて、あのヘビ男は、この心臓ごとシャルロッテを握りつぶすつもりだったんだ。
「この人形も、治せばシャルロッテ……さん、みたいに動くの?」
「えぇ、魔力が回復すればね」
「魔力?」
「そうよ。私たちは、アラン様に魔力を与えられて動いてるの。でも、今はそのアラン様が、魔力を使い果たしてしまって」
「そうなんだ」
シャルロッテさんの話だと、アランは、もう二日は眠っているらしい。
そして、その間、シャルロッテさんが一人でアランを守っていたらしく、そこにミーがやってきて、捕まっちゃったんだって。
「でも、なんで逃げてきたんだ?」
「え?」
「だって、あの子、王子なんだろ?」